久留倍官衙遺跡

久留倍官衙遺跡の概要

久留倍官衙遺跡は、三重県四日市市大矢知町に所在する官衙の遺跡で、2006年に国の史跡として認定されました。この遺跡は、弥生時代から中世にかけての多様な遺構が残されており、その中でも特に古代の朝明郡衙に関連する施設が目を引きます。

位置と地形

具体的な位置は、伊勢湾に向かって流れる朝明川と海蔵川に挟まれた垂坂丘陵の北東端で、最高標高は約30メートルです。遺跡は単独の問題ではなく、周囲の交通路の整備に伴う発掘調査からその存在が明らかとなり、国道1号北勢バイパスの計画変更が生じる一因となりました。

遺跡の歴史的背景

『日本書紀』には、672年に大海人皇子がこの地にて戦勝を祈願したという記述があり、また740年に聖武天皇が訪れたという伝承もあります。このことから、久留倍官衙遺跡は古代から重要な歴史的背景を持つことがわかります。

遺構について

遺跡は、主に以下の3つの地区に分かれています。これらはそれぞれ「丘陵上部」「東斜面」「丘陵裾部」と呼ばれ、それぞれに異なる建物群が存在しています。

1. 丘陵上部: 政庁の遺構があり、約80棟の掘立柱建物跡が確認されています。この地域の政庁は、正殿と脇殿が「コ」の字形に配置され、八脚門が正面に設けられていました。政庁区域は東西42メートル、南北51メートルであり、立地が特異である点から朝明郡の政庁であると考えられています。

2. 東斜面: 貯蔵施設としての正倉院が営まれたとされるエリアです。この時期の建物群は、内部に多数の柱を持ち、整然と配置されていることが特徴です。遺物からは8世紀後半の土器が出土しており、このエリアの発展がうかがえます。

3. 丘陵裾部: ここでは、竪穴建物跡が発見され、掘立柱建物と同時期に存在した可能性は低いとされています。このため、時期ごとの建設や使用の変遷を追うことが求められています。

遺構の時代区分

各建物群の時代を整理すると、次の3つの時期に分けられます。

• - I期 (7世紀末 - 8世紀前半): 政庁の存在が確認されており、基盤整備が行われたことが特徴。
• - II期 (8世紀前半 - 同後半): 大型建物が建設され、当時の収納施設としての機能を喪失した可能性があります。
• - III期 (8世紀後半 - 9世紀末): 東の斜面に正倉院が設置され、この地域の経済・文化的活動の中心として栄えました。

遺跡の保護と公園化

久留倍官衙遺跡はその重要性から、さまざまな研究や発掘が行われてきました。その成果は教育的な価値が高く、一般の人々が歴史に触れる機会を提供するために2020年に公園整備が完了し、「久留倍官衙遺跡公園」として一般公開されています。このように、遺跡は単なる考古学的な価値を超えて、現在に生きる人々にも多くの学びを提供しているのです。

もう一度検索