久野洋

久野洋（くの ひろし）は、1921年11月18日に生まれ、1988年5月27日に没した日本の化学者です。慶應義塾大学工学部（現在の理工学部）の教授を務め、その後、慶應義塾長に就任しました。工学部出身者が塾長となるのは、久野が初めてでした。また、日本私立大学連盟会長も務めるなど、教育界にも貢献しました。

久野は、生理学者で名古屋大学名誉教授の久野寧を父に持ち、妻の祖父は司法官僚の松室致という家系に生まれました。

1944年9月に慶應義塾大学工学部を卒業後、文部省大学院特別研究生を経て、1946年10月に工学部助教授となり、応用化学を専門としました。1960年3月には、「粉体の物理化学的性質とその応用の研究」というテーマで慶應義塾大学から工学博士号を授与されました。

1960年8月から1961年10月にかけて、アメリカのミシガン大学に招聘留学を経験し、帰国後の1962年4月1日に大学教授に就任しました。1963年10月には工学部長兼大学院工学研究科委員長に就任し、1965年5月から1969年6月まで、当時の慶應義塾長であった永沢邦男の下で常任理事を務めました。

1969年4月には、大学情報科学研究所が創設され、その初代所長に就任しました。1973年5月には、第14代慶應義塾長に選出され、1977年5月までその職を務めました。塾長退任後は工学部教授に復帰し、1977年5月には学事顧問に委嘱されました。

また、国際的な学術交流にも尽力し、1977年10月には日本学術訪中代表団に参加、1978年5月には中華人民共和国の科学技術研究の現地視察、同年10月には韓国の慶北大学校を訪問するなど、国際交流にも貢献しました。

久野の功績は、教育者、研究者としての活動に加え、慶應義塾大学の発展に大きく貢献した点にあります。特に工学部出身者として初の塾長に就任したことは、その後の大学運営に大きな影響を与えました。また、日本私立大学連盟会長としての活動も、私立大学全体の発展に貢献しました。

久野の専門分野である応用化学の研究においても、粉体の物理化学的性質に関する研究は、その後の化学研究の発展に寄与しました。また、情報科学研究所の創設に尽力するなど、時代の変化に対応した研究体制の構築にも貢献しました。

久野洋は、その生涯を通じて教育、研究、大学運営に尽力し、日本の学術界の発展に大きく貢献した人物として、その名は後世に語り継がれるでしょう。

関連情報

慶應義塾大学大学院理工学研究科・理工学部
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