乗竹孝太郎

明治期の経済思想家、乗竹孝太郎：自由民権運動から経済雑誌経営まで

乗竹孝太郎（1860-1909）は、明治時代の日本経済界に大きな足跡を残した人物です。名門の藩士の家に生まれた彼は、慶應義塾で学んだのち、自由民権運動の中核を担い、経済雑誌の経営者として活躍しました。その生涯と業績を紐解きながら、明治期の経済思想や社会情勢を探ります。

華麗なる家系と自由民権運動への参加

但馬国出石藩士の家に生まれた乗竹は、代々藩の家老を務めた名家の子孫でした。藩の命により慶應義塾へ入学し、そこで尺振八と出会い、共立学舎の助教となります。学問に励む傍ら、彼は自由民権運動に深く関与しました。沼間守一、田口卯吉、島田三郎らと「嚶鳴社」に参加し、積極的に政治改革を訴えたのです。さらに、田口卯吉と共に輿論社を設立し、『東京興綸新誌』を発行するなど、言論活動を通して社会に影響を与えました。

『東京経済雑誌』と経済政策への提言

1879年、『東京経済雑誌』創刊当初から乗竹は田口卯吉を支え、編集に携わりました。その後、横浜正金銀行に入行し、書記課長兼秘書役や文書課長を歴任する一方で、明治法律学校で理財学を教えるなど、幅広い活動を行いました。1905年には田口の後を継ぎ、『東京経済雑誌』社長に就任します。

社長に就任した乗竹は、全国各地で学術経済演説会を開き、独自の経済政策を積極的に提言しました。彼は日本の富国強兵を輪出工業の発展に求める一方、自由貿易の観点からの論陣を張り、時代の先端をいく経済思想を打ち出しました。その活動は、日本の経済発展に大きく貢献しました。

惜しまれつつ逝く、そして『東京経済雑誌』の継承

1909年、乗竹孝太郎は逝去しました。彼の葬儀には500名以上もの人々が参列し、その死を悼みました。島田三郎ら、多くの関係者が出席した葬儀は、乗竹の社会的な影響力の大きさを示すものです。彼の死後も『東京経済雑誌』は1923年まで発行を続け、日本の経済界に多大な影響を与え続けました。

残された業績と思想

乗竹は『英国憲法史』、『貨幣論集』、『貨幣論　粛堂遺稿』、『銀行論』、『経済学　粛堂遺稿』などの著書を残しています。これらを通して、彼の経済思想や歴史観を垣間見ることができます。彼の著作は、現在でも日本の経済史研究において重要な資料となっています。

乗竹孝太郎は、自由民権運動から経済雑誌経営まで、多方面で活躍した明治時代の代表的な人物です。彼の生涯は、激動の時代を生き抜き、日本の近代化に貢献した一人の知識人の生き様を示すものです。彼の業績は、現代の私たちにとっても、多くの示唆を与えてくれるでしょう。

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