田口卯吉

田口卯吉

田口卯吉（たぐち うきち、1855年6月12日 - 1905年4月13日）は、日本の経済学者、歴史家、実業家、政治家、ジャーナリストであり、多岐にわたる分野で活躍しました。東京府会議員や衆議院議員も務め、法学博士の学位も有していました。通称は卯吉、諱は鉉（みつ）、字は子玉、号は鼎軒と称しました。反保護主義を唱え、黄東山樵、畠山機知、田口十内などの筆名も用いました。

生涯

生い立ちと青年時代

1855年、江戸の目白台に幕臣の家庭に生まれました。父は西山家から養子に入った樫郎、母は町子です。田口家は徳川吉宗の従士を祖とする家系でしたが、後に零落しました。幼くして両親を亡くし、家督を相続しました。昌平坂学問所でも学び、旧幕臣の経営する骨董屋で働いた後、英語を学びました。明治維新後は、沼津兵学校で学び、中根淑の漢学塾でも学びました。

上京と大蔵省時代

1871年、廃藩置県により東京へ移り住み、薬屋を目指しますが、断念しました。その後、尺振八の私立共立学舎を経て、大蔵省翻訳局に入局し、経済学や西洋文明史を学びました。井上馨や渋沢栄一が辞任すると、翻訳局は縮小され、紙幣寮に異動しました。この頃、キリスト教にも触れています。1876年には旧幕臣の娘・千代と結婚しました。

ジャーナリスト・実業家

大蔵省を辞職後、『日本開化小史』や『自由交易日本経済論』などを出版し、著述活動を開始しました。1879年には『東京経済雑誌』を創刊し、自由主義の立場から経済や政治を論じました。また、東京府会議員や衆議院議員を務め、憲法制定や条約改正などの政治問題にも関わりました。実業家としては、南洋交易や鉄道経営にも携わり、両毛鉄道社長や小田原電気鉄道取締役などを務めました。政治活動においては、進歩党を結成し、財政整理期成同盟会を組織するなど、精力的に活動しました。

晩年

晩年は『国史大系』や『群書類従』の編纂にも尽力しました。これらの編纂事業は、利益を度外視した文壇への貢献として評価されています。1905年、慢性腎炎のため死去しました。1915年には従四位を追贈されました。

家族

母は佐藤一斎の孫、異父姉は木村熊二の妻。先妻の千代、後妻の鶴との間に三男をもうけました。長男の文太は陸軍薬剤中将、次男の武二郎は鉄道模型の草分け、三男の泖三郎は音響工学者として活躍しました。大蔵大臣の河田烈や教育者の山川黙は、妻の姉妹の子にあたります。

田口家住宅

東京都文京区西片の「田口家住宅」は、卯吉が建設したもので、その後代々受け継がれました。上田敏、乙骨三郎、近藤朔風も一時寄寓していました。2010年には国の登録有形文化財となりました。

著作

『自由貿易日本経済論』
『日本経済論』
『日本開化小史』
『日本開化之性質』
『日本之意匠及情交』
『支那開化小史』
『楽天論』
『大日本人名辞書』
『日本社会事彙』

著作文献

『鼎軒田口卯吉全集』（全8巻）
『明治文学全集14 田口鼎軒集』

伝記研究

田口親『田口卯吉』（吉川弘文館、2000年）
松野尾裕『田口卯吉と経済学協会 啓蒙時代の経済学』（日本経済評論社、1996年）
『田口卯吉と東京経済雑誌』（杉原四郎・岡田和喜編 日本経済評論社、1995年）
嘉治隆一『明治以後の五大記者 兆民・鼎軒・雪嶺・如是閑・竹虎』（朝日新聞社、1973年）
『三代言論人集 第5巻 田口卯吉』（時事通信社、1963年）

脚注

関連項目

思想家一覧
歴史家の一覧
明治の人物一覧
久米邦武筆禍事件

外部リンク

* 田口卯吉 | 近代日本人の肖像（国立国会図書館）

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