乙女なでしこ恋手帖

『乙女なでしこ恋手帖』は、深山くのえによる原作小説を基に、藤間麗がイラストを手掛けた大正時代を舞台にした少女向けライトノベルです。華族のしきたりに翻弄されるヒロインと、彼女と運命的な出会いを果たす青年による、切なくも美しい恋物語が描かれています。

物語の中心人物は、公家華族である東明家の三女、東明千鶴です。生後間もなく平民の家に養女として出され、16歳で実家に戻ってきた彼女は、家の借金のカタとして、嫌々ながら貸金業の息子、大津寄要と結婚することになります。要は、少女雑誌に挿絵を寄稿する二枚目ながら無愛想な青年です。実は、千鶴は結婚前に要と偶然出会っており、その出会いが二人の運命を大きく変えていきます。

物語を彩る登場人物には、千鶴の妹である喜和子や、千鶴と要を取り巻く友人、乙部蘭子、中根幹弥、有村小夜らがいます。それぞれの個性豊かなキャラクターたちが、千鶴と要の恋物語をさらに複雑で魅力的なものへと発展させていきます。

この作品は、小学館ルルル文庫の『FCルルルnovels』レーベルより刊行され、複数のシリーズで構成されています。シリーズは、『乙女なでしこ恋手帖 壱 春待つ五月』から始まり、『乙女なでしこ恋手帖 弐 やさしさの欠片』、『乙女なでしこ恋手帖 字のない恋文』、『乙女なでしこ恋手帖 三世を越えて』、『乙女なでしこ恋手帖 佳き日の彩り』、そして短編集である『乙女なでしこ恋手帖 花日和』と続きます。

小説の成功を受けて、2012年にはアニメ化もされました。2012年1月26日発売の第2巻にはショートアニメが同梱されており、少女小説においてアニメDVDが同梱されたのは、この作品が初めてのことでした。アニメの内容は、小説の冒頭部分、千鶴と要が出会うまでのエピソードが描かれています。アニメのスタッフには、脚本を担当した香村純子や、監督を務めたさんぺい聖など、実力派のクリエイターたちが名を連ねています。

『乙女なでしこ恋手帖』は、大正時代の美しい情景と、登場人物たちの繊細な感情描写が見事に融合した作品です。時代劇的な要素と恋愛要素が絡み合い、読者を引き込む魅力的な物語となっています。華族の娘と貸金業の息子という、異なる社会階層に属する二人の恋の行方、そして、周囲の人々との関わりを通して描かれる人間ドラマは、時代を超えて多くの読者に感動を与え続けることでしょう。また、アニメ化によって、より多くの人々に作品の世界観が伝えられたことも、この作品の歴史的意義をより高めています。

もう一度検索