九〇式五糎七戦車砲

九〇式五糎七戦車砲についての詳細

九〇式五糎七戦車砲（90しき5せんち7せんしゃほう）は、大日本帝国陸軍が1930年に開発した57mm口径の戦車砲です。この砲は八九式中戦車の主砲として広く使用され、特に日中戦争における実戦での性能が注目されました。

開発の背景

本砲の開発は1926年、陸軍技術本部による研究方針の一環として始まりました。設計に当たっては、以下の条件が設定されました。

• - 口径：57mm
• - 砲弾重量：2.5kg
• - 初速：350m/s
• - 高低射界：-8度～+30度
• - 最大射程：4,000m

これらの設計条件に基づいて、1926年3月に設計作業が始まり、同年10月には初号試製砲が完成しました。その後、数回の試験と修正を経て、オリジナルのデザインが決定されました。特に、その機能的な性能は良好であり、射程も5,700mを達成しました。

構造と技術

九〇式五糎七戦車砲は、単肉身管と砲尾体から構成されており、射撃時の砲身の後座長は300mmに達します。その設計には水圧駐退機と発条復座機が使用され、特に砲身がスライドする仕組みが射撃時の反動を和らげる機能を果たしています。また、照準具は砲身本体の上部に取り付けられ、射撃精度を向上させる役割を担っています。

使用弾薬

本砲は九〇式榴弾および九二式徹甲弾を使用します。榴弾は、重量2.36kg、発射時の初速は355.3m/sです。徹甲弾は2.58kgで、発射時の初速は349.3m/sに設定されています。これらの弾薬は、戦場での反応型ターゲットに対して効果的な威力を持っていました。

当時の技術的制約により、徹甲弾の貫通能力には一定の限界が見られましたが、制式化された際には、自国の戦車に対して十分な性能が確認されていました。特に昭和6年における試験では、主要な敵戦車に対して致命的な損傷を与える能力があると報告されています。

改良と後継

日中戦争初期の運用において、いくつかの問題点が明らかになりました。駐退機が銃弾によって貫通されることが多く、改造によって延命的な対策が試みられました。さらに、製造技術の向上に伴い、改良型の57mm戦車砲（九七式五糎七戦車砲）の設計が始まりました。これにより、戦車兵器の性能が向上し、後の戦争にも対応できる体制が整えられました。

生産と運用

九〇式五糎七戦車砲は主に大阪造兵廠で製造され、1942年10月までに430門が完成しました。これらの砲は、主に陸軍の戦車部隊で使用され、戦争のさまざまな局面で活躍しました。特に、陸上における装甲艇などにも搭載されることがあり、多様な戦闘スタイルを実現しました。

結論

九〇式五糎七戦車砲は、日本陸軍の戦車兵器の中でも重要な役割を果たした砲であり、その設計思想や技術的革新は後の戦車砲の発展にも影響を与えました。これにより、戦車火力の強化が進み、戦場における戦術に大きな影響を与えることとなりました。

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