九〇式水上初歩練習機

九〇式水上初歩練習機の概要

九〇式水上初歩練習機（きゅうれいしききすいじょうしょほれんしゅうき）は、日本海軍が使用した水上練習機の一つであり、1933年に制式採用された。開発は横須賀海軍工廠で行われ、主に渡辺鉄工所で製造された。この機体の設計に携わったのは、佐波次郎少佐と鈴木為文技師であり、機体の略番はK4Yである。

開発の背景

第一次世界大戦と第二次世界大戦の間、日本海軍は新型の水上練習機の必要性を痛感していた。これまで使用していた十三式水上練習機が次第に旧式化してきたため、1930年に新型機の開発を決定した。開発は順調に進み、同年中には試作機2機が完成した。

九〇式水上初歩練習機は、複葉の複座型である双フロート式水上機であり、翼は木製骨組に羽布が張られている。一方、胴体は鋼管熔接構造で、こちらにも羽布が使用されていた。この鋼管熔接構造は当時の水上機としては珍しく、機体の設計においては進歩的な試みが随所に見られた。また、支柱や張り線の数を減らすことで、より軽量化されたデザインが追求されていた。搭載されていたエンジンは、瓦斯電「神風」一基である。

試験と採用

飛行試験は1931年4月から開始され、良好な成績を収めることができた。その結果、1932年からは渡辺鉄工所での生産が始まり、1933年には正式に制式採用が決定された。当初、この機体は九〇式初歩水上練習機と呼ばれていたが、1938年に正式に九〇式水上初歩練習機と改称された。

活用と運用

九〇式水上初歩練習機は、海軍の訓練航空隊に配備され、水上機搭乗員の育成に活躍した。また、民間組織である日本学生航空連盟海洋部などでも使用された。性能が優れていたため、後に登場した零式水上初歩練習機が採用された後も、引き続き現役で使用され続け、海戦末期まで10年以上にわたり運用された。

ただし、水上機の搭乗員養成という特異な任務のため、生産機数は多くはなく、試作機を含めて211機のみが製造された。生産の大部分が渡辺鉄工所で行われたが、日本飛行機でも一部が製造された。

また、陸上機型や別のエンジン（瓦斯電「旗風」）を搭載したタイプも試作されたが、標準的な運用は九〇式水上初歩練習機で行われることが多かった。

技術仕様

• - 全幅: 10.90 m
• - 全長: 9.50 m
• - 全高: 3.51 m
• - 全備重量: 990 kg
• - エンジン: 瓦斯電 神風二型 空冷星型7気筒 160 hp×1
• - 最大速度: 163 km/h
• - 航続距離: 315 km
• - 実用上昇限度: 3,460 m
• - 武装: なし
• - 乗員: 2名

まとめ

九〇式水上初歩練習機は、その優れた性能と信頼性により、日本海軍の教育において重要な役割を果たした。こうした背景により、戦時中も多くの搭乗員を養成し続けた歴史を持つ機体である。

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