九三式側車付自動二輪車

九三式側車付自動二輪車の概要

九三式側車付自動二輪車は、日本陸軍で使用されていた公式な側車付き二輪車の名称です。この車両は、アメリカのハーレーダビッドソン社製のモデルを基に、一部改良が施されたもので、陸軍は既にハーレーダビッドソンの側車付きモデルを導入していました。

制式採用の経緯

日本陸軍ではかつて、米国製の車両を主に使用していましたが、昭和8年に入ると、日本内燃機株式会社や「シシドオートバイ」株式会社などが国産車両の製造を始めました。これを受け、陸軍技術本部は新しい国産車両の比較検討を行い、両社からそれぞれ4両を調達して走行試験を実施しました。この試験の結果、性能は一定の基準を満たしていたものの、さらなる改良の必要性も明らかになりました。

昭和8年11月には、改良を施した各メーカーの製品をさらに1両ずつ購入し、実際の走行テストを行ったところ、性能は著しく向上したものの、依然として改良が求められました。その後も継続的に改良が進められ、最終的には「シシドオートバイ」の解散を受けて、日本内燃機製の車両が正式に採用されました。

車両の特徴

九三式側車付自動二輪車は、ハーレーダビッドソン製のモデルからいくつかの点で改良されています。具体的には、地上高が向上され、不整地での走行性能が強化されました。また、発動機やドライブトレインにも若干の改善が施されています。

以下に、この車両の主要なスペックを示します：

• - 発動機：4ストローク空冷V型2気筒、シリンダー内径90mm、行程94mm、圧縮比4.7、排気量1197cc
• - クラッチ：乾式多板タイプで、ハーレー社製品と互換性がある
• - 変速機：前進3速、後退1速、摺動漸進式
• - 伝動装置：シャフトドライブ方式
• - 油槽：燃料搭載量は20リットル、潤滑油は5リットル、約8時間の連続走行が可能
• - 側車：「ハーレー」様式に準拠し、機関銃取り付け金具と補強、予備車輪を装備
• - 自重：440kg
• - 寸法：全長2.630m、全幅1.760m、全高1.200m
• - 発動機最大出力：22馬力（毎分3500回転）
• - 点火方式：マグネット式
• - タイヤ寸法：27インチ幅、4インチ
• - 最低地上高：150mm
• - 最小回転半径：1.930m
• - 最高速度：80km/h
• - 登攀力：傾斜1/3
• - 燃料消費率：14.6km/l
• - 潤滑油消費率：74km/l

このように、九三式側車付自動二輪車は、日本陸軍のために特に改良されたモデルであり、軍用目的としての高い性能を有していました。関連する文献としては、陸軍省公文書『九三式側車附自動二輪車準制式制定ノ件』があり、昭和9年11月28日に陸技本による記録が残されています。

関連項目

• - 日本陸軍
• - 九七式側車付自動二輪車
• - 陸王

この車両は、第二次世界大戦の激動の中で重要な役割を果たしました。

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