九二式歩兵砲

九二式歩兵砲について

九二式歩兵砲（きゅうにしきほへいほう）は、1920年代後半から1930年代初頭にかけて開発され、大日本帝国陸軍に採用された歩兵砲です。この砲は、各歩兵大隊に付属する大隊砲小隊が運用し、通常2門の砲が配備されることから「大隊砲」とも呼ばれています。

開発の背景

九二式歩兵砲は、従来の十一年式平射歩兵砲および十一年式曲射歩兵砲の統合後継として設計されました。十一年式平射歩兵砲は、口径が小さく榴弾の威力に限界があり、曲射砲は高威力ながら直射ができず、前装式のため二重装填の危険もありました。これらの問題を解決するために、平射・曲射両用の後装式火砲を目指して開発が進められました。

設計の特徴

九二式歩兵砲は、口径70mmで、榴弾の威力は他の同口径の砲と同等ながら、平射・曲射の双方が可能です。これは、通常の火砲の形態を持ち、初速は抑えられているものの、その分弾殻が薄く、炸薬量を多くすることが可能でした。そのため、ある程度の貫通力も持ちつつ、榴弾の威力を十分に発揮することができました。

とはいえ、その初速の低さから、貫通力は限られており、平射時における命中精度や射程においては同時期の四一式山砲に劣る場合が多くありました。大口径であるため、発射時の音や炎が大きく、敵の反撃を受ける危険が伴いました。このような背景から、平射を積極的に行う機会は限られ、主に防御や自衛用に使用されることが多かったとされています。

弾薬については、半固定式であり、装薬の量を弾道に合わせて数段階で調整可能でした。また、薬莢は再利用が可能で、使用回数が目視できる工夫が施されていました。この等の特性は、戦場での機動性や効率性に寄与しました。

砲塔と運搬

九二式歩兵砲は、クランク式の車軸を持ち、砲の姿勢を高くすることも、低くすることも可能でした。高姿勢では+13～+70度、低姿勢では-6～+51度の俯仰ができ、戦場の状況に応じた柔軟な運用が求められました。日本陸軍では様々な運搬方法が考慮され、駄馬による牽引か、兵士による分解運搬が行われました。弾薬の運搬も難題であり、輸送の負担を低減するため、弾薬輸送車が開発されたものの、依然として人力での運搬が主流でした。

運用実績

九二式歩兵砲は、日本陸軍の多くの戦闘状況において主力火砲として用いられました。日中戦争や太平洋戦争といった歴史的な戦闘において、歩兵部隊を支援し続けたことはその重要な役割を示しています。連合軍に対しても一定の評価を受け、鹵獲された後もアメリカ軍によって利用されることもありました。

結論

九二式歩兵砲は、その多機能性と運用の柔軟性から、日本陸軍における重要な火力支援手段として位置づけられました。その開発から運用、戦歴に至るまで、様々な試行錯誤や工夫が反映されており、戦争の激しい現場で生き残るための工夫が多く凝らされています。戦後もその存在は記憶され、歴史に残る火砲の一つと言えるでしょう。

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