九六式十五糎加農砲

九六式十五糎加農の概要と特徴

九六式十五糎加農（きゅうろくしきじゅうごせんちかのん）は、1930年代中期に日本陸軍によって開発された重加農です。この砲は、当時の他国における重加農の射程が最大25kmに達していることを受け、日本の砲兵力を強化する目的で設計されました。その結果、九六式十五糎加農はより大きな射程を実現し、特に遠距離砲戦において重要な役割を果たしました。

開発の背景

昭和初期、日本の砲兵は新たな戦闘環境に対応するために、より高度な技術を持った砲システムを必要としていました。そこで、従来の八九式十五糎加農の性能を見直し、さらに強化するための研究が行われたのです。この過程で、四五式十五糎加農を基にした改良が行われ、より現代的な機能を持つ砲が求められるようになりました。

九六式十五糎加農の開発は昭和8年に始まり、昭和11年に試製砲が完成しました。同年には各種試験が行われ、昭和12年から実戦投入が始まります。これらの試験では、移動時間や展開能力についても重視され、迅速な配置が可能な設計が取り入れられました。

構造と性能

九六式十五糎加農は、口径149.1mmを誇る重加農です。重量は総計で24,314kgに達し、運搬は九五式十三屯牽引車によって行われました。砲床は地面に展開されるタイプで、固定設置された状態で使用します。これにより、高い安定性が確保され、最大射程は26,200mに及びます。

砲身は52.7口径を持ち、高低照準の範囲は-7°から+45°までです。弾薬には分離装薬方式が採用され、一号装薬の場合の装薬量は18.80kgです。これにより、発射時の爆風は15mにも達し、高威力の射撃が可能です。

砲の運用と配置

この砲は固定式で展開に約4時間から5時間を要し、迅速な運用が求められる戦闘には向いていません。陣地を整備してから、正式に放列布置が完了する必要があります。しかし、長射程を生かし、戦線の後方や要塞砲としての役割を果たすことに特化していたため、固定砲台としての運用が主でした。

戦歴

九六式十五糎加農は太平洋戦争中に重要な戦闘で使用されました。フィリピン攻略戦では、アメリカ軍の要塞や艦艇に対して効果的な砲撃を行い、クレーギル砲台などを攻撃しました。また、千島列島の防衛にも配備され、重要な役割を担っていました。

現存する砲

現在、占守島には朽ちた状態の九六式十五糎加農が残存しており、歴史的な遺物としてその存在が確認されています。これにより、当時の技術革新や戦略が理解できる貴重な資料とされています。

このように、九六式十五糎加農は日本陸軍において重要な役割を果たし、その設計思想や戦闘力は、現代の砲兵システムにも影響を与えました。

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