九五式十三屯牽引車

九五式十三屯牽引車の概要と特徴

九五式十三屯牽引車は、1930年代に大日本帝国陸軍が重砲牽引のために設計した大型の牽引車です。この車両は、九二式八屯牽引車や九二式五屯牽引車といった同系列の車両に属しており、さらに大型化されたものです。同一系列に属することで、操縦教育や補給が容易になるという利点があります。

この牽引車の主な用途は、七年式三十糎榴弾砲の分解輸送であり、榴弾砲の長い砲身を搭載した運搬車の総重量は29トンにも達しましたが、その牽引能力は不整地でも確保されていました。また、九六式二十四糎榴弾砲も牽引することが可能です。

開発の背景

九五式十三屯牽引車の開発は、日露戦争後の日本陸軍が対ソ連戦に備えて攻城重砲を整備していく中で始まりました。これにより、七年式三十糎榴弾砲や九六式二十四糎榴弾砲を牽引する必要が生じ、大正13年6月に参謀本部が研究方針を決定しました。昭和8年11月から実際の審査が進められ、昭和9年1月に設計方針が策定されました。目指す仕様は、自重約13トン、エンジン出力は130馬力を目標としていました。

試作段階では、東京瓦斯電気工業株式会社が設計と製作を手がけ、様々な性能試験が行われました。試験の結果、自重が不足していることから牽引能力に課題があることが指摘されましたが、応急的に改修し運転試験が続けられました。

機構と性能

本車両は、分解された七年式三十糎榴弾砲を5km/hで、九六式二十四糎榴弾砲を12km/hで牽引できる全装軌式の牽引車です。設計上、前方に機関室、後方に操縦室を配置し、両側面に懸架装置を備えています。エンジンからの動力はシャフトを通じて起動輪に伝わり、一般的な自動車と同様の操作で運転できます。

また、登坂能力は牽引重量によって異なり、13トン牽引時に1/3、29トン牽引時に1/6の能力を示します。シャーシは頑強な鋼板製であり、エンジンは水冷6気筒ガソリンエンジンを搭載し、出力は130馬力から160馬力までの範囲です。運搬車としての使命を果たすために、出発点としての構造も重視されています。

現存と展示

現在、九五式十三屯牽引車は、パラオのバベルダオブ島にある屋外博物館に展示されています。ここでは日本海軍の通信隊が使用していた建物を利用し、歴史的な価値を保ちながら保管されています。これにより、かつての工業技術や軍事戦略の一端を知ることができる貴重な施設となっています。

まとめ

九五式十三屯牽引車は、その開発背景や性能、構造に至るまで多くの工夫が凝らされた兵器であり、陸軍の重砲牽引において重要な役割を果たしました。このような歴史的な車両を通じて、当時の技術力や戦略を知ることができるのは、今後も重要な意義を持ち続けるでしょう。

もう一度検索