九六式重迫撃砲

九六式重迫撃砲の概要

九六式重迫撃砲（96しきじゅうはくげきほう）は、大日本帝国陸軍が開発した305mm口径の重迫撃砲です。この兵器は、1930年代の初めにおける日本の火砲技術の進展を示すものであり、唯一の製造品が日中戦争の初期に上海での戦闘に投入されました。

開発の経緯

九六式重迫撃砲の背景には、昭和7年（1932年）の第一次上海事変がありました。この時、陸軍が保有していた十四年式重迫撃砲が海軍に譲渡されたことを受け、陸軍技術本部は新しい重迫撃砲の研究を開始することを決定しました。研究は昭和8年（1933年）10月に着手され、口径305mm、射程約4,000m、放列重量12トンを目指した設計が進められました。

設計作業は昭和8年10月に始まり、昭和9年（1934年）4月には大阪砲兵工廠に試作を依頼しました。その後、昭和11年（1936年）1月に竣工試験が実施され、続いて弾道性試験や運行試験を行い、機能や耐久性が確認されました。さらに、昭和11年度に行われた北満冬季試験でも実用性が評価されました。日中戦争の勃発後、実戦での修正が施され、この重迫撃砲は戦場に向かいました。開発にかかった費用は合計68,000円となり、昭和13年（1938年）7月29日に仮制式が上申されました。

構造と機能

九六式重迫撃砲は、砲床壕を掘ることなく設置できる砲床様式を特徴としています。この砲は、砲身や閉鎖機、揺架体、駐退機、復座機、砲架、車輪、揚弾機、照準器、砲床、砲脚などから構成されます。砲架以上は火砲車として運行可能で、移動は九五式十三屯牽引車によって行われます。

本砲の砲床体は円盤状で、中央には杠起塔が設置されています。そして、砲脚を取り付けるための穴が八ヶ所あり、砲架がその上に載せられます。高低照準機と方向照準機は歯弧式であり、火砲の平衡を調整するための装置も具体的に設けられています。

運用手順

本砲の運用手順は精密であり、まず設置地面を水平に整えた後、砲床車の前後を分離し、砲床体を地面に設置します。その後、砲脚や補助脚、床板を装着し、火砲車を砲床上に積載します。必要な部品を組み立てた後、揚弾機を起こし、最終的な備砲が完了します。逆手順での撤去も同様に行われます。

使用弾薬

本砲で使用される弾薬は破甲榴弾と代用弾であり、特に破甲榴弾は九五式破甲榴弾を改修したもので、実戦での有効性が確認されています。代用弾は演習用であり、信管や炸薬を持たず、実弾打撃の代わりに砂を詰めたものであるため、安全性が高いという特性を持っています。特に破甲榴弾の実用性は昭和12年の戦闘で確認され、後にいくつかの類型が制定されています。

おわりに

九六式重迫撃砲はその長い歴史を通じて、重迫撃砲の進化において重要な役割を果たしました。大日本帝国陸軍の様々な戦闘において、火力支援としてのその役割を果たし、独自の設計と機能には技術者たちの努力の結晶が見受けられます。

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