九四式四号丙無線機

九四式四号丙無線機について

九四式四号丙無線機は、大日本帝国陸軍によって開発された車輌専用の無線通信機器です。この無線機は特に日本の装甲戦闘車輌、例えば八九式中戦車や九七式中戦車などに多く搭載されました。通話可能な距離は約1キロメートルと考えられ、通信時における便利さを提供しました。無線機は使用しない際には、全ての器材を箱に収容し、簡易的に運搬することができる設計がなされています。総重量は約90kgとなっています。

開発の歴史

無線機の開発は大正14年から始まり、当初は各国で運用されている器材の調査が行われました。大正15年には「マルコニー」SA1型という超短波無線電信電話機の調査が実施されましたが、この機器は戦車用としては十分な性能を持っていませんでした。その後、昭和2年には参考用器材の調達の遅れにより審査を行うことができず、昭和3年には「マルコニー」SB1型を位置づけた研究が行われ、新たな車輌用電信機の設計が模索されました。

昭和4年には、一時的に審査が中止され、各部門の意見が一致しなかったことが要因として挙げられました。続く昭和6年には甲型と乙型の無線機をそれぞれ定め、通信距離を1キロメートルに設定しました。この頃から無線機の性能向上に向けた様々な議論や試験が行われるようになりました。

機能と性能

昭和8年には、戦車用無線機は中短波を利用することに変更され、設計に関わる各部署からの意見が参考にされました。新たな設計では、十三号甲無線電話機の送信部と乙無線機の受信部を組み合わせ、形状や寸法を調整しました。昭和9年には満州北部で冬期の試験が実施され、性能が不十分であることが判明しましたが、次の改善によって所期の性能を発揮できるようになりました。

戦車部隊での実績として、1940年のノモンハン事件では多くの戦車に無線機が搭載されており、戦の中で重要な役割を果たしました。しかし日本陸軍の無線機は、混信や雑音が多く、通信が妨害されることが多かったと言われています。そのため、昭和14年頃から技術本部は雑音対策に乗り出しました。

構成要素

九四式四号丙無線機は、通信装置、電源、そしてそれぞれの付属品で構成されています。通信装置には送信部、受信部、発電部があり、周波数範囲は4,200から4,600キロサイクルに設定されています。電源は蓄電池を用い、約70アンペアアワーの容量を誇ります。さらに付属品として送受話器、携帯用電圧計などが含まれ、無線機の運用を支えます。

結論

九四式四号丙無線機は、戦車部隊において重要な通信機器として位置づけられていましたが、完全な相互通信機能は提供されず、連絡のためには別の無線機を搭載する必要がありました。その普及は一部に限られ、教育機関などに限られました。戦時中の条件や困難を克服しながらも日本陸軍の通信技術を支え続けたこの無線機の存在は、戦車部隊の戦闘力向上に寄与したと言えるでしょう。

もう一度検索