九四式四屯牽引車

九四式四屯牽引車

九四式四屯牽引車は、大日本帝国陸軍が1930年代に開発した全装軌式の牽引車です。この車両は、最高速度40km/hを誇り、機動力が求められる砲兵部隊に必要不可欠な存在となりました。

開発の背景

日本陸軍では、機械化部隊の創設に伴い、砲兵部隊の機動力向上が急務とされました。そのため、1933年10月に参謀本部が『野砲牽引に要する兵器の研究』を決定し、高速で移動可能な牽引車の開発が指示されました。また、従来の自動車部品を流用することで、迅速な開発と補給を目指しました。

1934年4月には自動車工業株式会社に製作を依頼し、同年5月に試作車両が2台完成しました。しかし、試験では重心の位置が後方に偏っており、牽引性能に悪影響を与えました。この欠点を改良した新たな試作車両も同年8月に完成し、良好な試験結果を示しました。

実用試験は1934年10月から翌年2月にかけて野戦砲兵学校で行われ、結果が良好と評価されました。また、厳寒期における北満州での試験でも優れた性能を発揮しました。これらの成果をもとに、仮制式が制定されたのは1935年4月のことでした。

性能と機能

九四式四屯牽引車は、野砲を牽引するために設計されており、同時に砲兵員を搭乗させることが可能です。この牽引車は分隊単位で運用され、1両で機械牽引式野砲、もう1両では弾薬車を牽引します。運転は一般的な自動車と同様の操作系統を持っており、ドライバーは変速機やブレーキなどを容易に扱うことができます。

防御力は限定的で、機関部には3mmの防弾鋼板が使用されているものの、そのほかの部分には装甲が施されていません。牽引時の最大速度は40km/hであり、他の速度は、1速が4.8km/h、2速が7.8km/h、3速が13.1km/h、4速が24.6km/hです。水深50cmまでの徒渉能力を持ち、旋回半径3.6mでの運転が可能でした。

構造と設計

この牽引車は堅牢な構造をしており、野外での運用に適した設計がなされています。車体の前方には機関室があり、操縦装置と席、そして6人乗りのスペースが確保されています。また、車体の後部には火砲付属品用の物入れや牽引装置が装備されています。

車体の外側にはロック式の幌が取り付けられ、必要に応じて収納可能です。車両の燃料タンクは、前方座席下部に160リットル分、火砲の付属品や弾薬は物入箱に収容されます。電動機と蓄電池も装備されており、照明や始動に対応しています。

重要な装備と機能

エンジンは90度V型8気筒の空冷ガソリンエンジンが搭載されており、主要部品は九二式装甲自動車と共通化されています。このエンジンは常用1,600回転時に71馬力、最大で91馬力を発生します。動力の伝達は、主軸を通じて後方の起動輪に送られ、それにより車両の稼働が実現します。

また、車体の両側には転輪が装備されており、複列構造を採用しています。牽引フックは後部と前部に設置され、火砲を直接接続して牽引することが可能です。こうした設計は、九二式装甲自動車の要素を多く取り入れた合理的なものでした。

まとめ

九四式四屯牽引車はその高い機動力と牽引能力により、砲兵部隊にとって重要な戦闘支援を提供しました。その堅牢な構造と多機能性は、当時の戦場での活躍を支えた要素となっています。

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