九州鉄道140形蒸気機関車

九州鉄道140形蒸気機関車：その生涯と変遷

九州鉄道140形蒸気機関車は、その始まりを伊万里鉄道に持つ、個性的なタンク式蒸気機関車です。アメリカのクック社で製造された2両の機関車（製造番号2384, 2385）は、車軸配置0-6-0(C)の飽和式単式2気筒という構成で、当時の日本の鉄道車両としては珍しい存在でした。

伊万里鉄道から九州鉄道へ

1898年、伊万里鉄道が開業用として導入したこの機関車は、同社で1, 2と名付けられました。しかし、同年12月には伊万里鉄道が九州鉄道に事業譲渡されたため、九州鉄道140形（140, 141）として新たなスタートを切ることになります。運転整備重量が25.5tという小型機であったため、九州鉄道では他に類似の機関車がなく、持て余される存在でした。そのため、旧筑豊鉄道の71形、72形とともに、早期の淘汰対象となってしまいました。

近江鉄道への譲渡

1900年度下半期、この140形は近江鉄道に譲渡され、乙2形（3, 4）として新たな活躍の場を得ます。近江鉄道では、八日市以遠の路線開業に対応するための増備機として迎え入れられました。しかし、火格子面積と伝熱面積の比率が大きかったため、燃焼効率を高く維持するためには熟練した運転技術を要し、乗務員にはあまり好まれなかったようです。

常総鉄道での活躍と終焉

1913年10月、この機関車は常総鉄道に再び譲渡され、A2形（3, 4）としてその生涯を全うすることになります。常総鉄道では、鬼怒川支線という最適な働き場所を見つけ、長く使用されました。1922年には、3号機が5号機（2代目）に改番されました。4号機は1936年11月に廃車解体されましたが、残った5号機は1953年まで運用され、その長い生涯に幕を閉じました。

主要諸元

シリンダ寸法（直径×行程）：457mm×366mm
動輪直径：1,067mm
使用圧力：10.5kg/cm3
弁装置：スチーブンソン式アメリカ型
運転整備重量：25.19t

まとめ

九州鉄道140形は、その短い九州鉄道時代を除き、各鉄道会社で活躍した蒸気機関車でした。伊万里鉄道での導入から、九州鉄道、近江鉄道、常総鉄道と、所有者が変わるたびにその役割を変えながらも、それぞれの路線でその力を発揮しました。特に常総鉄道では長く使われ、その生涯を終えるまで日本の鉄道史に名を刻みました。小型ながらも、その歴史と変遷は、日本の鉄道史を語る上で欠かせない一部と言えるでしょう。

参考資料

臼井茂信「機関車の系譜図 2」1973年、交友社刊
川上幸義「新日本鉄道史 下」1968年、鉄道図書刊行会刊
臼井茂信・小石川多助・中川浩一「私鉄車両めぐり[62] 常総筑波鉄道(1)」鉄道ピクトリアル
* 白土貞夫「私鉄車両めぐり83 近江鉄道上」『鉄道ピクトリアル』通巻第239号、鉄道図書刊行会、1970年7月、84 - 92頁。

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