九帝五型

九帝五型（きゅうていごがた）

九帝五型は、1930年代に九州帝国大学で開発されたグライダーであり、愛称として「阿蘇号」があります。この滑空機は、日本の航空技術の発展に寄与し、多くの飛行記録を樹立したことで知られています。

経緯

1933年5月半ば、九州帝国大学航空会は練習用の上級滑空機の開発を計画し、佐藤博助教授がその設計を担当しました。彼の指導の下、同年6月初めに九州帝大造船学実験工場で製作が開始され、8月中旬には完成を迎えました。完成後、8月15日には阿蘇山での滑空練習が行われ、検査飛行を実施しました。この際、8月27日には杵島岳西斜面から立野駅近郊まで約8キロメートルを20分間にわたって飛行し、日本初の本格的な斜面上昇風を利用したソアリングに成功しました。

その後、九帝五型は九州帝大航空会での滑空練習に多く使用されました。1934年9月11日には久住高原での練習中に周回飛距離70キロメートル、飛行時間1時間26分という新記録を達成します。また、1935年の日本帆走飛行連盟の発足時からも活躍しており、同年6月18日には日本初となる飛行機によるグライダーの曳航が行われました。この際使用された曳航機は一三式陸上練習機でした。さらに、1935年には大日本帝国陸軍の滑空機教育においても教材として九帝五型が用いられました。

設計

九帝五型は、その性能よりも使い勝手を重視して設計されています。機体は耐久性を考慮して堅牢に作られ、また発航地点の山地への輸送や格納を考慮し小さくまとめられ、分解しての運搬も可能な設計となっています。高翼単葉配置の翼を持ち、速めの滑空速度と頑丈さを兼ね備え、ソアリングや曲技練習に適した特性を持っています。完成後は主にゴム索発航で離陸していましたが、後に自動車や飛行機による曳航式発航にも対応しました。

諸元

九帝五型の仕様は以下の通りです。

• - 全長: 5.55 m
• - 全幅: 10.0 m
• - 翼面積: 13.5 m²
• - 自重: 90 kg
• - 全備重量: 160 kg
• - 最良滑空比時速度: 57.5 km/h
• - 翼面荷重: 11.8 kg/m²
• - 乗員: 1名

これらの性能により、九帝五型は当時の日本滑空機の重要なモデルとして位置づけられ、今なお航空史にその名を刻んでいます。特に、久住高原での記録映像は九州大学の公式YouTubeチャンネルで閲覧可能です。

出典

• - 佐藤博『日本グライダー史』海鳥社、1999年。
• - 秋本実『日本陸軍試作機大鑑』酣燈社、2008年。

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