九条葱

九条葱：京都を代表する伝統野菜

京都府を代表する伝統野菜として名高い九条葱は、江戸時代に京都市南区九条地区で栽培が始まった青ネギの一種です。その上品な風味とやわらかい食感が特徴で、古くから京都の人々の食卓を彩ってきました。現在では京都府全域で栽培され、その生産量は年々増加しています。

歴史と由来

九条葱の起源は、伏見稲荷大社の建立時期に浪速から移植されたネギという言い伝えが残っています。歴史書『続日本後紀』には、九条村での水葱の栽培が記されており、『延喜式』にも栽培法が記載されているなど、古くから栽培されてきたことが伺えます。

京都盆地の気候風土も九条葱の栽培に適しており、比較的風が弱く、有機物に富んだ土壌は、青ネギの生育に理想的な環境でした。また、弘法大師にまつわる逸話も残されており、東寺周辺ではネギ畑にまつわる独特の風習が今でも受け継がれています。

江戸時代には九条から上鳥羽にかけてのネギが最高品質と評価され、京野菜の中でも最高峰として広く知られていました。ハウス栽培の導入によって、京都府全域での栽培が可能になり、現在では八幡市、京都市、南丹市、京丹後市など、府内各地で生産されています。

近年はラーメン人気など消費拡大もあり、2013年度の京都府内の作付面積は約200ヘクタールと、2008年度から27%増加しています。ブランド野菜としての地位を確立し、その人気はますます高まっています。

九条葱の特徴

九条葱には、主に「浅黄種」と「黒種」の2系統があります。

浅黄種は、細ネギで淡緑色の葉を持ち、5～10本に分けつします。早生種で耐暑性に優れ、夏から初秋にかけて収穫されます。

黒種は、太ネギで濃緑色の葉を持ち、3～4本に分けつします。葉はやわらかく、青い部分まで全て食べられます。耐寒性に優れ、冬が旬ですが、周年を通して出荷されています。一般的に「九条葱」として知られているのは、この黒種です。

霜に当たると甘みが増すことから、冬の時期が最も美味しいとされています。

栽培方法

九条葱の栽培には、露地栽培とハウス栽培があります。露地栽培では、秋に種を播種し、春に仮植します。太ネギは土寄せを行うことで軟白部を育て、甘みが増します。

種まきから収穫までは約1年以上かかります。夏に収穫する細い青ネギと、冬の太ネギとでは栽培期間が異なります。近年では、需要の高まりに対応するためハウス栽培も増加し、周年を通して安定した供給体制が整えられています。

利用方法

九条葱は、やわらかく甘みのある葉が特徴で、ネギ特有のツンとしたクセが少ないため、様々な料理に使われています。鍋物、煮物、和え物、ネギ焼きなど、幅広く活用できます。また、うどん、そうめん、ラーメンなどの薬味としても人気があり、その風味は料理を引き立てます。

特に冬に収穫された九条葱は、糖分が蓄積し、より一層甘みが増した状態になります。その風味の良さは、多くの料理人に高く評価されており、京都の食文化に欠かせない存在となっています。

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