九里正

九里正（くのり ただし）：早逝した才能あふれる野球選手

九里正は、1913年に大阪府で生まれた元アマチュア野球選手です。著名な洋画家である九里四郎を父に持ち、名門の家系に生まれました。祖父は海軍主計大監で貴族院議員の南郷茂光、伯父には海軍少将の南郷次郎、南郷三郎がいます。

関東大震災と野球との出会い

幼少期は東京で過ごしましたが、10歳の時に発生した関東大震災で母と妹を失うという悲劇に見舞われました。父とともに、父の友人であった小説家・志賀直哉を頼り奈良市へ移住。1928年、志賀直哉を中心に結成された「奈良アーチスト・ベースボール・チーム」に参加したことが、野球を始めるきっかけとなりました。

甲陽中学校での活躍

1929年に甲子園へ移り住み、甲陽中学校に入学。甲陽中学では遊撃手として活躍し、甲子園に春2回、夏1回の計3回出場を果たしました。1930年春の大会では、2回戦の静岡中学校戦で試合を決める満塁本塁打を放ち、チームを勝利に導きました。これは選抜高等学校野球大会史上2号となる満塁本塁打でした。

慶應義塾大学でのプレーと早すぎる死

1932年に慶應義塾大学に進学後も野球部でプレーを続け、卒業後は王子製紙に入社。しかし、間もなく応召され、1944年に32歳という若さで戦死しました。詳細な没年月日や場所は不明です。最愛の息子を失った父・四郎は、その悲しみから店と自宅を売却し、信州飯田へ疎開。九里正の死から9年後に亡くなりました。

九里正は、東京ドーム内の野球殿堂博物館にある戦没野球人モニュメントにその名が刻まれ、その功績と犠牲は今も語り継がれています。若くして戦火に散った彼の才能は、日本の野球史にその名を刻んでいます。

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