乞食

乞食（こじき）について

乞食とは、元々仏教用語であり、自己の生活を維持するために人々から施しを受ける行為を指します。具体的には、物質的な衣食を他者から乞い求めることを意味しています。乞食は古代インドの修行者たちによって広まったとされ、その行為は修行や清浄な生活の一環とされていました。仏教においては、行乞（ぎょうこつ）や托鉢（たくはつ）と呼ばれるこの行為は、比丘としての生活様式の一部で、煩悩からの解放を目指す修行形態の一つとして位置づけられていました。

由来と歴史

古代インドでは人生を四つの段階に分け、最終段階である遊行期には食物を乞い求めて旅をし、解脱を探求する生活を送ることが一般的でした。この風習は、仏教の教えに受け継がれ、特に釈迦の教えに影響を受けた修行者たちによって実践されていました。釈迦の最初の弟子であるサーリプッタが、乞食の姿を見て感銘を受け、仏教の教えを受け入れるきっかけとなったことはよく知られています。

一方、乞食という行為は、仏教が中国に伝わる際に、サンスクリット語の「食を乞う者」という意味が広まり、後に「乞食」と翻訳されました。日本でも同様に、乞食は仏教関連の文献に登場し、さまざまな教義が記載されています。

乞食の現代的意義

その後、乞食の概念は変化し、今日では路上などで他人から施しを受ける行為を広く指します。ただし、現代においては、ホームレスや貧困者を指す際にも使われることがありますが、これは誤解を招くことがあります。乞食を行う人々は必ずしも住所不定ではなく、また住所不定者であっても物乞いをせずに働いている場合も多いからです。

2000年代以降は、インターネットを利用して施しを求める「ネット乞食」の存在も現れるなど、乞食の形態は多様化しています。

世界における乞食

歴史的に見ても、乞食の概念は各地で異なり、幅広い社会情勢が影響しています。古代ローマ帝国では土地を失った人々が都市に流入し、物乞いが増加しました。また、産業革命の際にも多くの職人たちが職を失うことで、都市における乞食の数は増加しました。

日本においては、歴史的に被差別民として乞食が存在し、特に中世には乞食が組織化され、社会における清掃や他の役割を担っていました。明治時代に入ると、乞食行為への取り締まりが始まり、その後も法律によって規制されるようになっていきました。

現代では、軽犯罪法や児童福祉法で乞食行為は問われており、特に児童を利用した乞食行為は厳しく処罰されています。一方、募金活動などは適法とされ、仏教の乞食やパフォーマンスとみなされる場合もあります。

乞食を表す言葉

乞食に関連する言葉には、物乞い、ものもらい、おもらいさんなどがあります。また、地方によっては独特の言い回しも存在し、例えば「ほいど」や「節季候」といった言葉が使われることがあります。特に、岐阜県では「こじき祭り」という伝統行事が存在し、地域住民が乞食に恵んだことから豊作につながった逸話が伝えられています。

逸話

歴史には乞食にまつわる多くの逸話が伝わっています。「抱きつき弥五郎」と呼ばれる乞食や、空也上人が乞食を助けた話など、乞食は単なる物乞いの存在を超えた重要な役割を果たしてきたことが伺えます。現代においても乞食は社会問題として重要であり、その背景には様々な歴史や文化があることを理解することが求められます。

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