乱 (映画)

映画『乱』の詳細

映画『乱』（らん）は、1985年に公開された黒澤明監督による日本・フランス合作の歴史映画です。主演は仲代達矢が務め、全162分のカラー作品として制作されました。この作品は、シェイクスピアの悲劇『リア王』と日本の戦国時代の毛利元就に関する「三子教訓状」を基にしたストーリーを展開し、架空の武将・一文字秀虎の困難な家族関係と兄弟間の争いを中心に描かれています。

物語は、年老いた武将の秀虎が隠居を宣言し、3人の息子にそれぞれ城を分け与えるところから始まります。彼は、3本の矢を束ねた例えで息子たちの団結の重要性を説きますが、次男の三郎はこの教えを無視し、兄弟間に対立を引き起こします。秀虎は激怒し、三郎とその擁護者を追放し、その後、家族は破滅的な争いへと突入していくのです。

この映画は、製作に26億円という当時の日本映画では最大の予算をかけた大作であり、黒澤監督が9年間にわたり構想を練った結果でもあります。公開当時、国内外で高く評価され、特に第58回アカデミー賞では4部門にノミネートされ、衣装デザイン賞を受賞したワダ・エミがその功績の一部として名を馳せました。また、英国アカデミー賞でも6部門にノミネートされ、外国語作品賞とメイクアップ賞を受賞するなど、国際的にもその評価が高い作品です。

あらすじ

映画の物語は、戦国時代を厳しく生き抜いてきた70歳の将軍、一文字秀虎が巻狩の場で居眠りをすることから展開します。ある時、彼は夢の中で預言のような悪夢を見ることになります。この体験がきっかけとなり、隠居を決意し、長男に城を譲り、自分は静かな生活を望むようになります。しかし、これが彼の家庭における決裂の始まりとなります。秀虎は家督を譲った後、息子たちの間に権力を巡る争いが勃発します。

長男の太郎は、父から馬印を取り戻して家督と城の名実を確立しようとし、次男の次郎はこれを黙認します。三男の三郎は家族間の団結の必要性を否定し、父の意向とは逆に、衝突を促す行動を生じさせます。このように、家族間の緊張が高まる中で、次第に武力による争いに発展し、骨肉の争いが激化していきます。

制作背景

本作は黒澤の代表作の一つとして知られ、彼は自身の作品を「人類に対する遺言」と位置づけています。映画の製作は、1976年から始まりましたが、様々な困難を乗り越え、最終的にはフランス資本の協力を受けて1985年に完成しました。構想から長期間を要した理由として、映画のテーマの重さと、費用対効果の難しさが挙げられます。黒澤が求める規模の作品を実現することは、当時の映画業界においても困難な挑戦でした。

受賞歴

映画『乱』は、各種映画賞においても高い評価を受け、多数のノミネート・受賞歴があります。特に、国際的な舞台での受賞は、監督とキャストの名声を高める要因となりました。興行的には国内での記録を残すことができましたが、製作費の高さがネックとなり、黒澤作品の興行における課題も明らかになりました。

総評

『乱』は、単なる戦国時代の物語ではなく、家族間の絆や人間の愚かさを描いた深遠なメッセージを持つ作品として、今なお人々に感動を与え続けています。黒澤明による監督の技術、緻密な脚本、豪華なキャストに支えられたこの作品は、映画史における名作の一つと言えるでしょう。

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