乳酸カルシウム

乳酸カルシウム：食品と医薬品における多様な役割

乳酸カルシウムは、カルシウムイオンと乳酸イオンからなる化合物で、化学式はC6H10CaO6と表されます。自然界では、チーズの熟成過程において、乳酸菌の働きによって生成されることが知られています。しかしながら、工業的には乳酸と炭酸カルシウムを反応させることで効率的に製造されており、食品添加物や医薬品として広く利用されています。

医療における用途

医療分野においては、乳酸カルシウムは主にカルシウム補給と制酸作用を目的として用いられています。カルシウムが不足している状態（低カルシウム血症）や骨粗鬆症の治療に有効であり、妊娠中や成長期の子供たちのカルシウム摂取を補助する目的でも用いられています。

特筆すべき点は、乳酸カルシウムは食事の有無に関わらず吸収されやすいという点です。これは、様々なpH環境下でも吸収効率が維持されるためです。しかしながら、既にカルシウムの血中濃度が高い状態（高カルシウム血症）や腎結石の患者さんにとっては禁忌とされています。

さらに、虫歯予防効果も期待できることから、洗口液にも添加されることがあります。

食品における用途

食品業界では、乳酸カルシウムは多様な用途で活用されています。ベーキングパウダーの原料として、焼き菓子の膨張剤として利用されるほか、シュガーレス食品に添加することで虫歯の予防に貢献します。特に、キシリトールガムに添加された乳酸カルシウムは、歯のエナメル質の再石灰化を促進する効果があることが知られています。

また、カットフルーツ、特にメロンなどの食感維持にも効果を発揮します。塩化ナトリウムも同様の効果を持ちますが、乳酸カルシウムは塩味による風味の変化を抑えることができるため、より自然な風味を保ちたい場合に適しています。

食品添加物としての乳酸カルシウムは、E番号でE327と表示されます。

まとめ

乳酸カルシウムは、その高いカルシウム供給力、幅広いpHでの吸収性、そして虫歯予防効果など、多くの利点を持つ化合物です。医療分野と食品分野の双方で、人々の健康維持に貢献する重要な役割を担っていると言えるでしょう。今後も、その有用性から、さらなる応用が期待される物質です。

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