亀も空を飛ぶ

映画『亀も空を飛ぶ』

『亀も空を飛ぶ』（かめもそらをとぶ）は、2004年に公開されたイラク・イラン・フランス合作の映画で、バフマン・ゴバディが監督と脚本を手がけました。この作品は、フセイン政権崩壊前の危機的な状況にあるイラク、特にクルド人地域を背景に、戦争の影響を受けた子供たちの生活を描いたものです。映画は、2004年9月にスペインのサンセバスチャン国際映画祭で初披露され、グランプリを獲得するなど、国際的にも高く評価されています。

ストーリー概要

この映画の舞台は、イラクのクルド人居留地であり、大人たちが戦争によって疲弊していく中、若き少年サテライトは子供たちのリーダーとしての役割を果たします。彼は、衛星アンテナの設置や地雷除去を行う子どもたちをまとめ、混乱した環境の中で必死に生き抜こうとしています。

そのサテライトの前に、幼児を抱えた少女アグリンと、両腕を失った彼女の兄ヘンゴウが現れます。ヘンゴウは特異な能力を持ち、口で地雷の信管を抜くほどの器用さを見せますが、サテライトとの間には摩擦が生じます。サテライトは村のためにパラボラアンテナを取り付けますが、流れる番組は無意味で、長老たちは辟易とします。さらに、サテライトは昼は爆弾の売り手として働き、夜は通訳をすることを余儀なくされます。

アグリンやヘンゴウとの間に親密さが芽生える一方で、彼らの心にはそれぞれ違った負担と不安が存在します。特にヘンゴウは、自らの予知能力による不吉な模様を感じ取って苦悩します。彼の予知が現実となり、村の子供たちの運命を歪める危機が迫ってきます。

制作背景と収録

ゴバディ監督は、2003年のイラク戦争直後に現地を訪れ、目にした惨状がこの映画制作へのきっかけとなりました。撮影はクルディスタン自治政府の協力を得て行われ、武装した護衛を付けての過酷な環境の中で実施されました。

出演する子供たちの選出は非常に難航し、様々な地域を巡り、最終的にサテライト役の少年は撮影開始後に決まるという状況でした。特に、北部と中部の方言の違いがあったため、通訳が不可欠でした。撮影は2003年秋から2004年初頭まで行われ、現地のリアリティを生かすために様々な工夫がなされました。

受賞歴と評価

この作品は、サンセバスチャン国際映画祭でグランプリを受賞し、さらにベルリン国際映画祭の平和映画賞を受けるなど、数々の国際的な賞を得ています。日本では2005年に公開され、特に評価が高かった作品として、キネマ旬報の外国映画ベストテンで第3位にランクインしました。

結論

『亀も空を飛ぶ』は、戦争がもたらす悲劇とそれに抗う子供たちの姿を描き出しており、深いメッセージを持つ作品です。リアルな映像と独特のストーリー展開が、多くの観客に感動を与える理由となっています。この映画は、戦争や平和の重要性を考えさせる重要な物語であり、観る者に深いメッセージを残します。

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