亀井戸水神社

亀井戸水神社（かめいどみずじんじゃ）

香川県高松市鍛冶屋町に鎮座する亀井戸水神社は、宗教法人としては水神社（みずじんじゃ）と称される神社です。高松市の中心市街地、番町交差点にほど近い国道11号高松北バイパスの裏手に位置し、その敷地は都市のビル群に囲まれた中にあります。都心部という環境から社地は決して広くありませんが、かつて高松城下町を支えた重要な水源の神を祀る歴史ある神社です。

この神社の創建は、江戸時代前期の正保元年（1644年）に遡ります。当時の高松藩主であった松平頼重公が、城下町の水源として極めて重要であった「亀井戸」の守護神として創建しました。以来、城下の水源を守り、人々の生活を見守る神社として崇敬されてきました。

時は流れ、21世紀初頭に大きな転機を迎えます。2001年、神社の敷地を含む一帯が高松丸亀町商店街G街区における第一種市街地再開発事業の対象地に指定されたのです。この再開発計画の進行に伴い、2010年の春には社殿を含む一切の施設が撤去されることとなりました。そして、再開発ビルが亀井戸跡も含むこの場所に完成するのに合わせて、神社は2012年4月に、以前の場所からわずかに南へ移り、国道11号に面した一角に新たな社地を得て再建されました。現在の鎮座地は、この移転によって定められた場所です。

当社の起源であり、その名の由来ともなっている「亀井戸」は、江戸時代の高松城下にとって不可欠な水源でした。この井戸は単なる井戸ではなく、その跡地はかつての神社敷地を含め、現在の国道11号の敷地にまで広がっていたことがわかっています。天保年間（1830年から1844年）に作成されたとされる「高松新井戸水本並水掛惣絵図」には、亀井戸の詳細な様子が描かれています。この絵図によれば、井戸の平面形状は北西の隅が斜めに削られたような長方形で、その規模は南北方向に約61.7メートル、東西方向に約16.0メートルにも及んだと記録されています。この数値からも分かるように、亀井戸は現代の感覚でいう井戸のイメージを超え、まるで大きな池のような広がりを持っていた壮大な水源でした。

「亀井戸」という名称は、その湧き水が出る穴が甕（かめ）のような形をしていたことに由来すると伝えられています。この特徴的な湧出口から「甕井（亀井）霊泉」と呼ばれたことが、そのまま井戸の名前、そして神社の名前に繋がりました。

この亀井戸の存在は、現在も周辺地域の地名にその名を留めています。現在の「亀井町」という地名は、かつて亀井戸のそばにあったことに由来するものです。もともと、この地域は「北亀井町」と「南亀井町」に分かれており、当社の旧所在地も北亀井町の一部でした。しかし、第二次世界大戦後の戦災復興土地区画整理事業の一環として行われた区画整理により、昭和33年（1958年）7月11日付けで住所表記が変更されました。これにより、当社の旧所在地を含む北亀井町の一部は鍛冶屋町に編入され、残る南亀井町は単に「亀井町」と改称されることになったのです。このような経緯を経て、亀井戸に由来する地名は、現在の亀井町として引き継がれています。

亀井戸水神社へのアクセスは、公共交通機関が便利です。JR高松駅からは徒歩でおよそ15分、ことでん瓦町駅からは徒歩約8分です。また、ことでんバスを利用する場合は、五番町バス停から徒歩2分と非常に近くなっています。

都市の中にありながら、江戸時代の重要な水源と城下町の歴史を今に伝える亀井戸水神社は、高松の街の成り立ちを知る上で興味深い場所と言えるでしょう。かつての広大な亀井戸の姿を想像しながら参拝するのも良いかもしれません。

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