了仙寺

了仙寺

了仙寺は、静岡県下田市七軒町に位置する日蓮宗の寺院です。法順山と号し、身延山久遠寺を旧本山としています。この寺は、寛永12年（1635年）に行学院日朝によって開山され、下田奉行の今村正長が開基となりました。

歴史的背景

了仙寺の創建には、徳川家康が深く関わっています。大坂夏の陣で目を患った家康が、家臣の勧めで目の神様として崇められていた日朝に祈願したところ、病が平癒したと伝えられています。この出来事をきっかけに、家康は寺の創建を約束し、その証として寺紋には徳川家と同じ三つ葉葵紋が用いられています。

下田条約締結の地

了仙寺は、日米和親条約の追加条約である下田条約が締結された場所としても非常に有名です。さらに、日本とアメリカの間の最初の通貨交換比率が、この寺での交渉によって決定されたという歴史的な意義も持っています。

ジャスミン寺

境内から参道にかけて、数多くのアメリカジャスミンが植えられており、「ジャスミン寺」という別名でも親しまれています。アメリカジャスミンは、実際にはニオイバンマツリというナス科の植物で、モクセイ科のジャスミンとは異なる種類の花です。

文化財

了仙寺は、その歴史的価値から複数の文化財指定を受けています。

国指定史跡

了仙寺: 下田条約締結の地として、国の史跡に指定されています。

下田市指定文化財

今村伝四郎等三代の墓: 境内墓地入口にある三基の五輪塔は、それぞれ第二代下田奉行今村正長、同四代今村正成、同五代今村正信の墓で、江戸時代初期に建立されたものです。また、五輪塔の脇にある小さな墓は、今村正長の妻のものとされています。

その他

横穴遺跡（了仙寺洞窟遺跡）: 自然洞窟を利用した古墳時代後期の埋葬施設です。防空壕や物置として利用されたため形状は大きく損なわれていますが、人骨や有鉤銅釧、耳環、玉類、須恵器、土師器などが出土しており、6世紀後葉から8世紀にかけて埋葬が行われたと推定されています。特に有鉤銅釧は、弥生時代の遺物であり、埋葬時まで伝世品として受け継がれていたと考えられ、注目されています。この遺跡は、伊豆地方における古墳時代の特徴を示す重要な遺跡として、辰ヶ口岩陰遺跡や波来洞穴とともに重要視されています。出土品は、ハーバーミュージアムで展示されています。

MoBS黒船ミュージアム

了仙寺の境内には、MoBS黒船ミュージアムが隣接しています。このミュージアムは、かつて了仙寺の宝物館として利用されていた場所をリニューアルしたもので、「日本人から見た外国・外国人から見た日本」をテーマに、16世紀から19世紀にかけての黒船や開国、異文化交流に関する約3000点の貴重な原本資料を収蔵・展示しています。

展示内容

了仙寺関連文書: 徳川歴代将軍が了仙寺に発給した朱印状や、武田信玄の家督譲状などの古文書が展示されています。
* 黒船・異文化交流関連史料: 黒船やペリー、ハリスに関連する絵巻や図画、書籍、吉田松陰やジョン万次郎の書、16世紀から19世紀にかけて外国で描かれた日本地図や、日本で描かれた世界地図、日本に関する書籍やジャーナル、図画、ポンチ絵など、明治期の異文化交流に関する様々な資料を見ることができます。

エピソード

江戸時代、黒船来航によって下田が開港した後、了仙寺はアメリカ人の休憩所としても利用されました。この寺は、歴史的な出来事の舞台であり、異文化交流の足跡を今に伝える貴重な場所です。

了仙寺は、その美しい自然と歴史的な背景、そしてMoBS黒船ミュージアムの存在によって、訪れる人々に深い感動を与えています。

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