二リン化三カルシウム

二リン化三カルシウム：性質、用途、危険性

二リン化三カルシウム（化学式: Ca3P2）は、カルシウムとリンからなる化合物です。赤褐色または灰色の結晶もしくは塊状の固体として存在し、1600℃という高い融点を持ちます。しかし、その取り扱いは非常に危険です。100～150℃で発火する自然発火性物質であり、水、酸、アルカリと激しく反応して、猛毒のホスフィンガス（PH3）を発生させます。空気中でも徐々に酸化し、ホスフィンガスを放出するため、取り扱いには十分な注意が必要です。

この危険性から、二リン化三カルシウムは消防法において危険物第3類（自然発火性物質および禁水性物質）に分類されています。火災発生時には、決して水を使用してはなりません。水と反応してさらに大量のホスフィンガスを発生させ、火災を拡大させる危険性があるためです。消火には、乾燥砂、膨張ひる石、膨張真珠岩、または二酸化炭素を使用する必要があります。

性質と反応

二リン化三カルシウムは、水と以下のような反応を起こします。


Ca3P2 + 6H2O → 3Ca(OH)2 + 2PH3


この反応で生成されるホスフィンは、人体に極めて有害なガスです。吸入すると、呼吸困難、めまい、嘔吐などの症状を引き起こし、重症の場合は死に至る可能性もあります。さらに、ホスフィンは空気中で自然発火するため、火災を引き起こす危険性も秘めています。

製造方法

二リン化三カルシウムは、主に炭化カルシウム（カーバイド）と五酸化二リンの反応、またはリン酸カルシウムの高温での炭素還元によって製造されます。後者の反応は、以下のように表されます。


Ca3(PO4)2 + 8C → Ca3P2 + 8CO


用途

二リン化三カルシウムの主な用途は、実験室でのホスフィン発生源、殺鼠剤、殺虫剤の製造です。特に、他の殺鼠剤に耐性を獲得したネズミに対して効果的な殺鼠剤として利用されます。これは、二リン化三カルシウムが胃酸によって分解され、猛毒のホスフィンを発生させる性質を利用したものです。

アセチレンへの影響

アセチレン発生に用いられる炭化カルシウムには、微量の二リン化三カルシウムが含まれる場合があります。そのため、生成されたアセチレン中には微量のホスフィンが混入し、不快な臭いを発生させます。純粋なアセチレンは無臭であるため、臭気は不純物の存在を示唆します。

取り扱い上の注意

二リン化三カルシウムを取り扱う際には、その危険性を十分に理解し、適切な安全対策を講じる必要があります。密閉容器で保管し、水や酸、アルカリとの接触を避けることが重要です。また、作業時には防護服、手袋、マスクを着用し、換気の良い場所で作業する必要があります。誤って摂取した場合、直ちに医療機関に連絡する必要があります。

関連物質

二リン化三カルシウムに関連する物質として、一リン化カルシウムや窒化カルシウムなどが挙げられます。

もう一度検索