二乗

仏教における「二乗」とは、主に声聞乗（しょうもんじょう、Śrāvakayāna）と縁覚乗（えんがくじょう、Pratyekayāna）の二つを指します。この項目では、主にこの意味での二乗について解説します。

「乗」という言葉は、サンスクリット語の「ヤーナ」（梵: यान yāna）の漢訳であり、道や行路、そして乗り物を意味します。仏教においては、仏の教えを人々の迷いを脱し、悟りの境地へと導く乗り物であると捉え、教法を「乗」と表現するようになりました。

大乗仏教における二乗の扱い

大乗仏教の視点では、声聞と縁覚の二乗は、煩悩を断ち切った聖者（阿羅漢）ではあるものの、現世への執着を断つことに偏り、自己中心的で利他的な行いを軽視していると見なされることがあります。そのため、大乗仏教からは「小乗」と批判的に呼ばれることもありました。

特に小乗と名指しで批判されたのは、西北インドに勢力を持っていた説一切有部や犢子部などの部派仏教であったとされています。

大智度論における二乗観

ナーガールジュナ（龍樹）によって著されたとされる『大智度論』においては、小乗と見なされた人々は大いなる誓願や慈悲の心が欠如しており、あらゆる功徳を求めず、ただひたすらに老・病・死といった苦しみから逃れることのみを願っているとされています。

法華経における二乗観

一方、『法華経』においては、二乗の者も本来は菩薩であるという肯定的な立場を取り、二乗の者も仏となることができる（二乗成仏）と説いています。これは、すべての人々が仏性を持ち、平等に成仏できる可能性を持つという法華経の重要な教えを示しています。

二乗は、仏教の多様な思想や実践を理解する上で重要な概念です。特に大乗仏教と部派仏教の思想的な対立、そして法華経における万人成仏の思想を理解する上で、その意味を深く掘り下げていくことが重要となります。

関連項目

一乗
三乗
慈
悲
* 菩薩

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