二人の子どもフランス漫遊記

ジャン＝リュック・ゴダールとアンヌ＝マリー・ミエヴィル監督による1977年から1978年にかけて制作されたフランスのテレビドキュメンタリー映画『二人の子どもフランス漫遊記』。全12話、各話26分構成で、フランスのテレビ局アンテーヌ2で放映されました。

本作は、ゴダールとミエヴィルが1973年にパリからグルノーブルに移住後、設立した映画会社ソニマージュで製作されました。同社は、若手プロデューサー、ジャン＝ピエール・ラッサムの支援を受けており、本作以外にも複数の作品を制作しています。本作は、フランス国立視聴覚研究所（INA）との共同制作であり、ベータカムカメラによる撮影という当時としては先進的な技術も用いられています。

『二人の子どもフランス漫遊記』という邦題は、原題である『France tour détour deux enfants（フランス 一回り 回り道 二人 子どもたち）』を直訳したもので、ややこなれた印象を与えます。しかし、原題は単語が断片的に並べられたものであり、特に「détour（回り道）」という単語は、ゴダールが傾倒していたアンリ・ベルクソンらのフランス現代思想を思わせる、重要な要素です。

本作は、G・ブリュノの児童文学作品『Le Tour de la France par deux enfants（二人の子どもたちによるフランス一周）』を原作としていますが、単なる翻案ではなく、19世紀の原作に「détour」という現代的な要素を加えることで、19世紀から現代への脱構築を試みています。この脱構築の試みは、本作の構成や内容にも反映されています。

本作の構成はユニークです。毎回、ビデオカメラやマイクを構える子供（男の子または女の子）のカットから始まり、その後、ゴダール自身（劇中では「ロベール・リナール」という名前で登場）が子供に哲学的または社会学的な質問を投げかけます。ゴダールは、チャールズ・シュルツの『ピーナッツ』のように、姿を見せないまま質問します。その後、男女2人のキャスターがその質問について討論し、最後にキャスターの1人が締めくくります。毎回の構成はほぼ同じですが、子供たちの映像が追加される場合もあります。全12話は、6つのペア（「運動1」と「運動2」、「運動3」と「運動4」など）で構成されており、各ペアは対照的なテーマを扱っています。

撮影は、ウィリアム・リュプチャンスキー、ドミニク・シャピュイ、フィリップ・ロニ、ピエール・バンジェリが担当しました。彼らは、ゴダールとミエヴィルの以前の作品にも参加した経験があります。出演者は、アルノー・マルタン、カミーユ・ヴィロローら子供たちと、ベティ・ベール、アルベール・ドレーといったキャスターの他、ゴダール自身も出演しています。

『二人の子どもフランス漫遊記』は、ゴダールとミエヴィルがグルノーブルで過ごした期間に制作された作品であり、「ゴダールの政治の時代」とは異なる「ゴダール＝ミエヴィルの共同監督時代」、「ビデオ映画の時代」、「ソニマージュの時代」を象徴する作品と言えます。ソニマージュでの経験は、後のゴダールの作品、特に『ゴダールの映画史』シリーズに大きな影響を与えています。本作は、ゴダール独自の映像表現と哲学的な問いかけ、そして子供たちの無邪気な存在感が見事に融合した、実験的で独創的なテレビドキュメンタリーです。

もう一度検索