二十試甲戦闘機

二十試甲戦闘機

二十試甲戦闘機は、大日本帝国海軍によって計画された戦闘機です。この名称は公式なものではない可能性がありますが、広く用いられているため、本項ではこの呼称を使用します。

計画の経緯

1945年5月、海軍は「高高度甲戦闘機」という新型戦闘機の方針を持ち、第一技術廠での官民合同会議において各メーカーに具体的な要求を提示しました。この会議では、烈風や紫電改の改良、陣風の再検討についての三つの案が提起されましたが、陣風の再案はその場で却下され、最終的に烈風や紫電改のエンジン換装型である「決戦戦闘機」と新たに設計する「次期戦闘機」が開発されることとなりました。この「次期戦闘機」がのちに二十試甲戦闘機として知られるものです。

要求された具体的な性能は、次の通りです。

• - 最大速度：704 km/h（高度10,000 m）
• - 着陸速度：148 km/h以下
• - 10,000 mまでの上昇時間：15分以内
• - 上昇限度：13,500 m
• - 航続時間：巡航2.5時間、全力で0.7時間
• - 武装：20mm機銃4挺（弾丸250発）

また、胴体にはゴム防弾タンクを、翼には自動消火装置を装備し、操縦者の後方や弾倉周辺の防御も強化される予定でした。

この要求に応じて三菱、川西、そして中島が性能提案を行いました。三菱は烈風の性能向上型や改良案、完全新規設計案を提出し、川西は紫電改を基にした案、中島は陸軍向けのキ87やキ94IIを参考にした案を提示しました。その結果、烈風の改良案が選ばれ、三菱と中島による共同開発が決定されました。この機体が、二十試甲戦闘機として計画されたものです。

後に1945年6月の計画要求審議会で、さらなる具体的な方針が定められ、より実現可能性の高い「ハ44-13」エンジンの装備が求められました。当初、海軍は二十試甲戦闘機の戦力化を1947年初頭に見込んでいましたが、終戦によって開発は中止されました。

設計の詳細

最終的に選定されたデザインは、烈風改（あるいは烈風一一型）を基にしており、既に設定された性能目標の多くに達していました。主な違いは、搭載エンジンが「ハ44-21」になったことと、プロペラが重いものに変更されたことです。また、航続距離や武装、防弾性能は烈風性能向上型と同様であり、高高度での空戦性能を確保するために自動空戦フラップの改良も予定されていました。

諸元

• - 全幅: 14.0 m
• - 主翼面積: 31.3 m²
• - 自重: 3,392 kg
• - 全備重量: 5,753 kg
• - エンジン: 中島 ハ44-21 空冷星型18気筒（2,200馬力）× 1
• - 最大速度: 657 km/h
• - 巡航速度: 417 km/h
• - 上昇限度: 10,500 m
• - 航続時間: 巡航2.5時間＋全速0.6時間
• - 武装: 九九式二〇粍二号機銃五型× 4、訓練用七・七粍機銃× 2（訓練時）
• - 乗員: 1名

名称について

「二十試甲戦闘機」という名称は、堀越二郎と奥山正武の共著『零戦』に記載されたもので、5月23日の官民合同会議での呼称とされていますが、当時の公式文書にはこの名前は見当たらず、「次期戦闘機」と称されていました。そのため、「二十試甲戦闘機」は仮称である可能性も指摘されています。また、「陸風」という愛称も検討されていたという説も存在します。

二十試甲戦闘機は、日本海軍が計画した最後の戦闘機と言えるでしょう。

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