二四〇九階の彼女

二四〇九階の彼女

西村悠によるライトノベル作品。イラストは高階@聖人が担当し、電撃文庫から全2巻で刊行された。第五回電撃hp短編小説賞銀賞受賞作。

あらすじ

物語は、階層世界「塔」を舞台に展開される。主人公サドリは、「アサ四棟」一三〇二階の住人で「教務官」を目指していたが、ある日「彼女」の言葉をきっかけに、世界の真実を求めて階層を降りる旅に出る。彼は「彼女」に会うこと、そして「海」を見ることを目的に、様々な階層を巡り、個性的な人々や奇妙な出来事と遭遇していく。

主要登場人物

サドリ
物語の主人公。一三〇二階の住人で、外の世界を目指す少年。お人好しな性格で、コーヒーを愛飲している。旅を通じて様々な経験を積み、成長していく。

カエル
カエル型の人工生命体。遺跡で発掘され、サドリと行動を共にする。尊大な口調で話すが、サドリをサポートする頼もしい存在。戦闘技術にも精通している。

「彼女」
物語の重要な人物。灰色の髪を持つ謎の少女。かつて「アサ五棟」二四〇九階に住んでいたが、「世界追放刑」に処せられた。サドリに外の世界の存在を教え、彼の旅のきっかけを作る。

アントロポシュカ
各階層に存在する「神の代行機械」。女性の人格を持つ人工知能で、その階層を管理し、人々の「幸せ」を維持することを目的とする。しかし、長い年月を経て狂いをきたしている個体も存在する。

塔の世界観

「塔」は、古代世界の技術で建造された巨大な構造物であり、数千もの円盤状の「階層」が積み重なっている。各階層はそれぞれ異なる文化や環境を持ち、独立した世界として機能している。階層間の移動は、アントロポシュカが管理する【門】と【鍵】を通じてのみ可能となっている。

各階層の紹介

物語には、以下のような個性的な階層が登場する。

一三〇二階：サドリの故郷。平和で安定した世界だが、閉鎖的な一面も持つ。
一二四四階：【競争】の世界。敗者は人権を剥奪され、殺戮される。
一〇五六階：白いタイル張りの奇妙な世界。冷凍睡眠装置が点在する。
九四三階：戦争の世界。『赤』と『白』の陣営に分かれて殺し合う人々が暮らす。
九一四階：「積層図書館」を中心とした世界。パラレルワールドの情報が集積されている。
九〇〇階：カエルの世界。住人は全てカエル。
七三五階：暗闇の世界。「ヒカリ」を求める人々が、アントロポシュカに追われる。
二一三階：パズルの世界。頭を使うことが最も素晴らしいとされる。
一八六階：列車の世界。「楽園」へ向かう列車の中で人々は一生を過ごす。
二四〇九階：「彼女」の故郷。詳細は不明だが、猫を飼う人々が多い。

物語のテーマ

『二四〇九階の彼女』は、世界の真実を求める探求心、閉鎖された世界からの脱却、そして人間らしさとは何かを問いかける作品である。サドリの旅を通じて、読者は固定観念にとらわれず、自分の目で世界を見ることの大切さを学ぶことができるだろう。

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