二宮宏之

二宮宏之について

二宮宏之（にのみや ひろゆき、1932年5月16日 - 2006年3月13日）は、日本の歴史家で、主にフランス近世史を専門としました。彼は長年にわたり東京外国語大学で教職に就き、その後フェリス女学院大学の名誉教授も務めました。彼の研究は、社会史から国制史、さらには歴史理論に至る多岐にわたり、日本の西洋史学において顕著な影響を与えました。

経歴

二宮は東京都に生まれ、フランス文学者の二宮敬を兄に持つ家庭で育ちました。彼の親族は後に著名なフランス研究者となることから、自然とフランスに対する興味を持つようになりました。東京大学の文学部西洋史学科に進学後、彼は歴史家アルベール・ソブールに影響を受け、フランス革命を中心に研究を進めました。1960年から1966年までパリのエコール・ノルマル・シュペリウールで学び、アナール学派の新たな歴史学手法に魅了されました。

この学派は、それまでの政治史や事件史から脱却し、一般市民の視点から歴史を語る新しいアプローチを提唱しました。二宮は、アナール学派の中心人物たちと深い関係を築き、帰国後にはその影響を日本の歴史学に広める役割を果たしました。

東京大学大学院人文科学研究科を中退した後、助手を経て1966年に東京外国語大学の助教授に就任し、1977年には教授へと昇進しました。1984年には、文化人類学者の川田順造や日本中世史家の網野善彦とともに『社会史研究』という学術誌を創刊しました。これは、日本の歴史学において新しい社会史の研究が始まる重要なきっかけとなりました。また、フランスの歴史家の著作を日本に紹介する役割も担い、多くの著作を翻訳しました。

国際的な活動

二宮は国際史学会議（ICHS）の運営にも関与し、1995年から2000年まで事務局長を務めました。この役割を通じて、彼は世界の歴史家との広範なネットワークを築き、国際的な歴史学の発展にも寄与しました。

二宮の研究範囲は、フランス農村史や国制史、社会思想まで多岐にわたります。1986年に発表された最初の単著『全体を見る眼と歴史家たち』には、フランス絶対王政に関する重要な論文が収められており、若い歴史学者たちにも影響を与えました。その後、彼の著作は数多くの歴史家に評価され、彼の研究が後の世代に引き継がれる基盤を築きました。

晩年と影響

東京外国語大学を退官した後も、彼は電気通信大学やフェリス女学院大学で教授として活動を続けました。2006年3月に急逝した際、彼の深い教養と語学能力、そして親しみやすい人柄は、フランスを中心とした多くの学術誌や一般紙に取り上げられ、多くの人々に惜しまれました。

著書と翻訳

二宮の著作には、『全体を見る眼と歴史家たち』（1986）、『歴史学再考 - 生活世界から権力秩序へ』（1994）、『マルク・ブロックを読む』（2005）、『フランス アンシャン・レジーム論 - 社会的結合・権力秩序・叛乱』（2007）などがあります。また、彼の著作集は2011年に刊行され、歴史学の発展に貢献した重要な資料となっています。彼の翻訳業務もあり、フランスの歴史学への理解を深めるために多くの翻訳書を手がけました。

以上のように、二宮宏之は日本の歴史学における重要な人物であり、フランス近世史に関する研究を通じて多くの後進に影響を与え続けています。

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