二文字理明

二文字理明

二文字理明（にもんじ まさあき）氏は、1946年に生まれた日本の障害者福祉学者です。長年にわたり研究と教育に携わり、大阪教育大学の発達人間福祉学講座で名誉教授の称号を得ています。その専門分野は、発達人間学を基盤としつつ、障害者福祉と北欧学に及び、これらの領域を横断する独自の視点から研究を展開しました。

経歴

学歴としては、1968年に広島大学を卒業。さらに研鑽を積むため同大学の大学院教育学研究科に進みましたが、1973年に博士課程を中途退学しています。大学院では教育学を専攻し、教育学修士の学位を取得しました。この教育学の素養が、その後の発達人間学や障害児教育に関する研究の基礎となったと言えるでしょう。

研究活動と主な業績

二文字氏の研究活動は多岐にわたりますが、特に北欧諸国の福祉制度や思想に関する研究は重要な柱となっています。スウェーデンなどの福祉先進国の事例を詳細に分析し、日本の障害者福祉や教育のあり方に対する示唆を提供しました。研究テーマは、障害のある人々の人権保障、社会参加（インクルージョン）、雇用問題といった現代的な課題から、福祉国家の歴史的背景、特に過去に福祉政策と結びついた優生思想の問題にまで及びました。優生思想が福祉政策に与えた影響や、それによって引き起こされた人権侵害に関する考察は、その著作の中でも繰り返し論じられています。

精力的に執筆活動を行い、専門書から一般向けの啓発書まで、数多くの著書や編訳書を世に送り出しました。共著には、福祉国家における優生思想の問題を扱ったもの、障害者福祉の概説書、教育法規に関する書籍などがあり、幅広い分野でその知識と見解を示しています。代表的な著作としては、『福祉国家の優生思想』、『障害者福祉概説』、『優生保護法が犯した罪』、『ソーシャル・インクルージョンへの挑戦』などが挙げられます。

また、海外の優れた研究成果や思想を日本に紹介するため、編訳書も多数刊行しています。特に北欧の障害者政策や教育に関する書籍の編訳が多く、『スウェーデンの障害児教育改革』、『北欧の知的障害者』、『インクルージョンの時代』といった書籍は、北欧における先進的な実践や理論を日本の研究者や実務家に伝える上で貴重な役割を果たしました。

翻訳活動と社会への影響

二文字氏の活動の中で特筆すべきもう一つの側面は、児童文学の翻訳です。スウェーデンの作家レイフ・クリスチャンソンによる人気絵本シリーズ「あなたへ」全15巻の翻訳を手がけました。このシリーズは、子どもの内面や感情に寄り添った優しいメッセージが込められており、日本の子どもたちや保護者の間で広く愛されました。

翻訳された「あなたへ」シリーズは、その質の高さと内容の良さからメディアでも注目を浴びました。中でも、フジテレビ系列で放送されていた番組『忘文』において、人気アイドルグループSMAPのメンバーである稲垣吾郎氏によって朗読されるという機会がありました。これにより、絵本の内容がさらに多くの人々に届けられることとなり、社会的な関心を集めるきっかけとなりました。

まとめ

二文字理明氏は、発達人間学、障害者福祉、北欧学という多角的な視点から、日本の福祉や教育、社会のあり方について深く考察し、その成果を多くの著作や翻訳を通じて社会に問いかけ続けてきました。特に、北欧の事例を日本に紹介しつつ、障害者の人権尊重と社会参加の促進、そして過去の優生思想という負の遺産に対する批判的な検討は、その研究者としての重要な貢献です。その活動は、インクルーシブでより人間らしい社会の実現に向けた議論に、多大な影響を与えています。

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