二河白道

二河白道：極楽往生への道の譬喩

二河白道（にがびゃくどう）は、浄土教において、極楽浄土への往生を願う信心のありさまを象徴的に表した譬喩です。別名、二河譬（にがひ）とも呼ばれます。この譬喩は、浄土教の祖師の一人である善導大師によって説かれたと伝えられ、主に掛け軸などに描かれた絵画を通して人々に説法が行われました。

絵画には、一般的に以下の様な構図が用いられています。上段には阿弥陀如来が中央に位置し、脇侍として観音菩薩と勢至菩薩が左右に配置されています。これは、浄土の救済を表す重要な存在です。中段から下段にかけては、細く白い線が一直線に描かれ、これが極楽への道、すなわち「白道」を表します。

白道の右側には、濁流が逆巻く水の河が、左側には燃え盛る火の河が描かれています。この二つの河は、人間の煩悩を象徴しています。水の河は、貪欲や執着といった欲望の奔流を、火の河は、怒りや憎しみといった激しい感情の燃え上がりを表現しています。

下段には、現世を表す岸に立つ人物が描かれています。その人物は、貪欲や怒りに代表される煩悩、あるいはそれらを象徴する盗賊や獣の群れに追いかけられています。この様子は、現世において煩悩に苦しむ人々の姿を表しています。

東岸からは、釈迦如来の「逝け（逝きなさい）」という声が、西岸からは阿弥陀如来の「来たれ（来なさい）」という声が聞こえてきます。この二つの声は、それぞれ現世からの離脱と浄土への迎え入れを象徴しています。

絵画を見る者は、この人物に自分を重ね合わせ、二つの河、すなわち煩悩の誘惑を乗り越え、阿弥陀如来の呼びかけに応えることで、白道を辿り、西岸、すなわち極楽浄土へと往生できることを教えられます。この絵図は、極楽往生への道が、決して容易ではないことを示しつつも、阿弥陀仏の慈悲によって救済を得られるという浄土教の根本的な教えを簡潔に表現しています。

二河白道の絵画は、往生への強い願望を持つ人々にとって、信仰の拠り所となり、励みとなるものであったと考えられます。また、絵画を通じて、複雑な仏教の教えが視覚的に理解しやすくなった点も、その普及に貢献したと言えるでしょう。現代においても、二河白道は浄土教の重要な象徴として、多くの信者によって理解され、信仰の対象となっています。

参考文献

「日本佛教語辞典」岩本裕 1988年 平凡社 557ページ
「佛教用語事典」須藤隆仙 1993年 新人物往来社 301ページ

関連項目

白道で始まる項目の一覧
遣迎院、遣迎寺、遺迎山

もう一度検索