二部形式

二部形式（にぶけいしき）

楽曲全体が二つの大きな部分、通常「A部」と「B部」に分かれて構成される楽曲形式を「二部形式」と呼びます。これは、様々な楽曲の基本的な構造の一つであり、唱歌形式に分類される形式です。音楽形式の中でも最もシンプルながら、他の多くの複雑な形式の基礎を築く重要な役割を果たしています。一部形式を除けば最も基本的な構造であり、他の形式は二部形式の発展や変形と捉えることもできます。

典型的な二部形式は、主要なA部とB部から成り立ち、それぞれがさらに短いフレーズや楽節で構成されることが一般的です。例えば、A部が「a」というフレーズで始まり、それに続くフレーズが「a'」のように「a」と類似している場合、これはA部がaとa'の組み合わせでできていることを示します。同様に、B部も「b」やそれに続くフレーズで構成されます。ここで使われる記号（a, a', bなど）は、それぞれのフレーズの関連性を示唆しています。例えば、同じ記号は同一のメロディーやリズムを、ダッシュ（'）が付いた記号は元の記号と類似していることを、異なる記号は対照的な内容であることを表現します。

この形式の楽曲では、多くの場合、A部の終わりと楽曲全体の終わりに明確な終止感を持たせるように作曲されます。一方で、A部やB部の途中では、音楽の流れを途切れさせないために終止感を避けるように書かれるのが一般的です。また、典型的な二部形式では、A部とB部の長さはほぼ等しくなる傾向があります。最も基本的な形では、A部、B部それぞれがさらに短い単位に分割され、例えばa、a'、bのような各部分がそれぞれ4小節程度の長さで構成されることもあります。

B部の中でも特定の役割を持つ部分が、「ブリッジ」や「さび」と呼ばれることがあります。「さび」という言葉は、繰り返し現れる部分を指す「リフレイン」の意味で使われることもあり、文脈によって解釈が異なる場合があります。

より発展した二部形式では、A部やB部の各セクションが長くなり、内部構造が複雑になることもあります。特に、A部が主調ではなく属調（短調の場合は平行調）で終わる形式も見られ、これは後に発展するソナタ形式の基本的な要素を予感させる構造と言えます。

演奏においては、二部形式のA部とB部には、それぞれ反復記号（例えば、::||や ||: ）が付されることが習慣的にあります。これにより、それぞれのセクションを繰り返して演奏することが指示されます。しかし、楽曲の種類や演奏の慣習によっては、これらの反復記号が付されていても、演奏時に反復を省略することが許容される場合があるとも言われています。

二部形式は、その単純さと応用範囲の広さから、クラシック音楽からポピュラー音楽に至るまで、幅広いジャンルの楽曲に見られます。以下に、二部形式を採用している著名な楽曲の例をいくつか挙げます。

• - 童謡・唱歌

ちょうちょう
春の小川
荒城の月
花
村の鍛冶屋
早春賦

• - ポップス・流行歌

蒲田行進曲（川崎豊ほか）
たばこ屋の娘
君待てども（平野愛子）
君戀し（二村定一）
テネシーワルツ（Patti Page）
絶唱（舟木一夫）
霧氷（橋幸夫）
知床旅情（森繁久彌）

このように、二部形式は非常に基本的な構造でありながら、多くの人々に親しまれている楽曲の根幹を成す重要な形式です。

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