互市

中国の対外貿易システム「互市」：古代から近代まで

中国の歴史において、互市は国家間の交易を支える重要な制度でした。単なる交易場というだけでなく、時代によって異なる意味合いを持ち、中国の対外関係を理解する上で欠かせない要素です。本稿では、互市の歴史的変遷と特徴を詳細に解説します。

漢代から唐代：交易の拠点としての互市

古代中国において、互市は国境地帯に設けられた公認の交易場でした。漢代には、南越、匈奴、鮮卑といった周辺民族との交易が、互市を通じて行われていました。これらの交易は、政治的・経済的な関係を構築する上で重要な役割を果たしました。唐代になると、海港における貿易が盛んになり、市舶制度が整備されました。市舶は、海港における互市を管理する機関であり、海外貿易の規制と管理を担っていました。

明代：海禁政策と勘合貿易

明代初期は、海禁政策によって、許可なく行われる海外貿易を厳しく制限しました。例外として、朝貢貿易の一環として行われた勘合貿易があります。勘合貿易は、日本との貿易において重要な役割を果たしましたが、明朝政府の管理下に置かれていました。しかし、16世紀後半になると、倭寇の活動が活発になり、海禁政策は行き詰まりを見せます。結果として、朝貢貿易以外の私貿易も黙認されるようになり、互市の形態は変化していきました。

清代：互市体制の確立と広東貿易

明代の政策を引き継いだ清朝も、当初は朝貢貿易を中心とした体制を維持しました。しかし、朝貢体制の外に、外交を伴わない互市体制が発展しました。江戸時代の日本も、この互市体制を通じて清朝と貿易を行いました。清朝は、自由貿易を認めたわけではなく、様々な規制を設けて貿易を管理しようとしました。その代表例が、欧米との貿易を、広州に限定した広東貿易体制です。この体制は、アヘン戦争の敗戦と南京条約の締結によって終焉を迎えます。

主要な互市地点

清代において、互市が行われた主な地点は、以下の通りです。

キャフタ: ロシアとの交易拠点
上海（江海関）
寧波（浙海関）
厦門（閩海関）
* 広州（粤海関）: 広東貿易の中心地

これらの地点は、地理的な条件や政治的な状況を考慮して選ばれ、中国と海外諸国との交易を支える重要な拠点となりました。

互市の歴史的意義

互市は、中国の対外貿易における歴史的な制度であり、その変遷は、中国と周辺諸国、そして世界との関係性の変化を反映しています。海禁政策から自由貿易への移行、朝貢貿易から互市体制への変化、そして広東貿易体制の崩壊など、互市の歴史を辿ることで、中国の歴史における国際交流のダイナミズムを理解することができます。また、それぞれの時代の政治的・経済的背景を理解することが、互市の役割や意義をより深く理解することに繋がります。さらに、アヘン戦争を契機とした貿易体制の変容は、近代中国の形成において大きな転換点となりました。互市の歴史は、このような中国近世史における重要な一端を担っていると言えるでしょう。

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