互恵通商協定法

互恵通商協定法とは：アメリカの貿易政策転換点

互恵通商協定法（Reciprocal Tariff Act）は、1930年関税法（スムート・ホーリー法）を改正する形で成立したアメリカ合衆国の法律です。この法律は、アメリカの貿易政策において重要な転換点となりました。

成立の背景

1930年関税法は、高率な関税を課すことで国内産業を保護しようとしましたが、結果として国際貿易を停滞させ、世界恐慌を深刻化させる要因となりました。これに対し、フランクリン・ルーズベルト大統領は、互恵通商協定法を推進し、議会から大統領への関税引き下げ権限の委譲を目指しました。

法律の概要

互恵通商協定法は、以下の点を特徴としています。

大統領への関税引き下げ権限の付与: 議会は、一定期間に限り、大統領に関税引き下げの権限を委譲しました。大統領は、他国との交渉を通じて、1930年関税法の関税率を最大50%まで引き下げることが可能になりました。
互恵主義の原則: 関税引き下げは、相手国の関税引き下げや輸入制限撤廃を条件とする互恵的なものでした。
議会の承認手続きの簡素化: 締結された貿易協定は、上院の承認を必要としませんでした。これにより、議会による貿易協定の阻止が困難になりました。

法律の意義と影響

互恵通商協定法は、アメリカの貿易政策に大きな影響を与えました。

世界恐慌からの脱却: 関税引き下げによる国際貿易の活性化を通じて、世界恐慌からの脱却に貢献しました。
GATT体制の構築: 関税及び貿易に関する一般協定（GATT）の締結は、この法律に基づく権限によって行われました。GATTは、後の世界貿易機関（WTO）へと発展し、多角的貿易体制の基礎となりました。
大統領の権限強化: 貿易交渉における大統領の権限が強化され、アメリカの貿易政策における行政府の役割が拡大しました。

その後の展開

互恵通商協定法に基づく大統領の関税引き下げ権限は、当初3年間とされていましたが、その後、数回にわたり延長されました。1961年には一旦失効しましたが、ケネディ大統領の提唱により、1962年通商拡大法が制定され、新たな関税引き下げ権限が大統領に付与されました。

その後も、GATT（WTO）におけるラウンドやFTA交渉において、大統領に貿易促進権限が付与されることが一般的となり、互恵通商協定法の精神は受け継がれています。

まとめ

互恵通商協定法は、アメリカの貿易政策における重要な転換点であり、世界恐慌からの脱却、GATT体制の構築、大統領の権限強化など、多岐にわたる影響を与えました。この法律は、現代の国際貿易体制を理解する上で不可欠な要素と言えるでしょう。

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