五十嵐平達

五十嵐平達は、1924年に会津若松市で生まれ、2000年12月17日に生涯を閉じました。彼は、自動車デザイナーとしてのキャリアをスタートさせ、その後、自動車評論家として独自の地位を確立しました。彼の評論は、産業考古学の視点から自動車の歴史を深く掘り下げたもので、他の追随を許さないものでした。

五十嵐は旧制都立工業高校で機械工学を学び、16歳で運転免許を取得。ヂーゼル工業（現いすゞ自動車）に入社し、軍用トラックの設計に携わりました。その後、乗用車のボディ設計を学ぶため、オオタ自動車工業創業者の子息である太田祐一が経営するコーチビルダー、ワイドフィールド・モータースに移籍しました。

1949年頃からは、自動車の写真撮影にも取り組み、専門雑誌に寄稿するなど、自動車評論家の草分けとしても活動を開始しました。1950年にはフリーランスの自動車デザイナーとして独立し、日産やいすゞなどのバスのカスタムボディや、モーターショー出展用の特別車など、数多くのデザインを手がけました。

1950年代には、デザイナーの視点からカースタイリングを評論し、1960年代には「モーターレビュー」誌の編集長を務めました。1970年代以降は、日本人と自動車との関わり合いを、豊富な写真資料と自身の経験をもとに多角的に論じました。特に、戦前の米国車や1950年代の国産乗用車、トラック、バス、そして当時のモータリゼーションの発展途上の状況については、自動車史家として卓越した見識を持っていました。

1980年代以降は、1989年にオープンしたトヨタ博物館のコレクション体系づくりに尽力し、展示車両の選定や学芸員の指導にあたりました。トヨタ乗用車第一号であるトヨダ・AA型乗用車のレプリカ製作にも貢献しました。博物館には、彼のコレクションを公開する特別閲覧室「五十嵐文庫」が設けられています。

五十嵐平達は、数多くの著作も残しており、代表的なものに、世界の自動車シリーズ（フォード、トヨタ、リンカーンなど）や、『写真が語る自動車の戦後』、『世界の名車』などがあります。これらの著作は、彼の自動車に対する深い知識と情熱を物語っています。

彼は、自動車文化の普及と歴史記録に尽力した人物として、高く評価されています。その功績は、日本自動車殿堂にも名を連ねるほどです。

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