五十猛駅

はじめに

島根県大田市五十猛町に位置する五十猛駅（いそたけえき）は、西日本旅客鉄道（JR西日本）が管轄する山陰本線の停車駅です。この駅名は、日本の古い神話に登場する「五十猛命」（いそたけるのみこと）という神様の名前から取られています。この地域に古くから伝わる神話との深いつながりを感じさせる名称です。事務管コードは▲640750が付与されています。

駅の歩み

五十猛駅の歴史は、大正時代に始まります。具体的には1917年（大正6年）5月15日、山陰本線が石見大田駅（現在の大田市駅）から仁万駅まで延伸された際に、新たな停車駅として開業しました。開業当初は、旅客だけでなく貨物の取り扱いも行っていました。しかし、時代の流れとともにその役割は変化していきます。まず、貨物輸送は1975年（昭和50年）7月16日に廃止され、次に荷物の取り扱いも1984年（昭和59年）2月1日をもって終了しました。駅の運営体制も変わり、1977年（昭和52年）6月20日には業務委託駅となりましたが、その後さらに合理化が進み、1985年（昭和60年）3月14日にはついに無人駅となりました。国鉄の分割民営化を経て、1987年（昭和62年）4月1日からはJR西日本の駅として現在に至っています。

駅の構造

五十猛駅は、線路が築堤の上に設けられた形態の地上駅です。ホームは列車交換が可能な島式ホームが1面あり、2つの線路（2線）がそれを挟む構造となっています。駅舎は設置されておらず、利用者はホームの西側端にある通路から駅に出入りします。通路の先には小さな駅前広場がありますが、特に目立った施設はありません。かつてはホームへ上がる場所に、乗車駅証明書を発行する機械が置かれていましたが、現在は撤去されています。ホームの中ほどには待合室があり、列車を待つ間の雨風をしのぐことができます。しかし、駅構内にトイレは設けられていません。ホームに接する2つの線路は、どちらも上り・下りの両方向の列車が入線・出発することが可能な配線となっています。ただし、高速で通過する列車のために分岐器を改良した「1線スルー」方式は採用されていません。以前、特急「いそかぜ」（米子駅 - 博多駅間を結んでいた列車）が運転されていた頃には、当駅で上下の「いそかぜ」号が列車交換を行う光景が見られました。のりばには番号標が整備されており、2017年3月時点の表記では、入口側（海側）の線路が1番のりばとされています。駅は浜田鉄道部によって管理されていますが、窓口業務などは行われない無人駅です。

利用状況

近年の五十猛駅の利用者数は減少傾向が続いています。最も古いデータとして手元にある1984年度の1日平均乗車人員は99人でした。その後、1994年度には54人、2004年度には41人と着実に減少が進みました。そして、直近のデータである2022年度の1日平均乗車人員はわずか9人となっており、非常に利用者の少ない駅の一つとなっています。これは、地域の人口減少や自家用車の普及など、様々な要因が影響していると考えられます。

駅周辺

五十猛駅の周辺は、静かな住宅地が広がっており、商店などはほとんど見られません。地域住民の生活の場が中心となっています。駅周辺にある公共施設としては、大田警察署の五十猛駐在所があります。また、少し足を延ばすと五十猛海水浴場があり、夏場には多くの人が訪れる地域の憩いの場となっています。交通面では、駅前を通る道路から少し離れた場所に主要幹線道路である国道9号が通っています。また、駅に接続する県道として島根県道289号久利五十猛停車場線が指定されています。公共交通としては、石見交通の路線バス「五十猛駅前」停留所が利用できますが、これは駅前すぐではなく、駅前の道路を左に進んで約300メートル先の国道沿いに位置しています。

隣の駅

JR西日本 山陰本線において、五十猛駅の東隣（大田市方面）は静間駅、西隣（仁万方面）は仁万駅となっています。

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