五月危機

1968年フランス五月革命：学生と労働者の蜂起とその影響

1968年5月、フランスのパリを舞台に、新左翼学生を主導とした大規模な社会運動、五月革命が勃発しました。この革命は、パリ大学ナンテール校での学生による占拠事件をきっかけに、瞬く間にパリ全土、そしてフランス各地へと広がり、経済・社会に大きな影響を与えました。しかし、革命はド・ゴール政権を倒すには至らず、最終的には国民投票によるド・ゴール政権の支持確認で終息を迎えました。

発端と拡大：ナンテール校からパリ全土へ

1963年に設立されたパリ大学ナンテール校では、1968年3月、学生による大学占拠が発生。ベトナム戦争反対や大学運営への抗議などが背景にありました。5月10日には、大学当局による閉鎖措置への反発から学生たちがパリ市内へ繰り出し、警察と衝突。この衝突をきっかけに、学生を支持する労働者や市民も加わり、大規模なデモやストライキへと発展していきました。

五月革命の特徴は、学生と労働者の連携でした。学生運動は、既存の政治体制や社会構造への不満、自由な自己表現への欲求などを背景に、既存の左翼政党や労働組合とは異なる、より急進的な思想や行動をとりました。一方、労働者たちは賃金改善や労働条件の改善を求め、学生運動に共鳴し、行動を共にしました。

ド・ゴール政権の対応と総選挙

事態の深刻化を受け、ド・ゴール大統領は5月30日に国民議会を解散、総選挙を行うことを宣言しました。これは、国民の意思を問うことで、革命の勢いを鎮めようとする戦略でした。首相のポンピドゥーは、デモに参加しない国民（サイレント・マジョリティ）に共和国の防衛を訴え、世論の支持を訴えました。6月に行われた総選挙では、ド・ゴール派が圧勝し、五月革命は終息に向かいました。ド・ゴール大統領の辞任は、その後1969年3月の金価格高騰によるゼネストがきっかけとなり、翌4月に行われました。

イデオロギーと影響：共産主義・新左翼思想の影響

五月革命では、チェ・ゲバラや毛沢東といった共産主義革命家が象徴的に扱われました。フランス革命から続く革命の歴史観、高度経済成長期のパリにおける若者の自由な自己表現への欲求、そして世界各地で起こっていた学生運動の高まりが革命の背景にありました。「毛主席語録」が学生の間で流行したことも、この革命の特徴の一つです。しかし、革命はあくまで学生運動が中心であり、政府転覆を目的とした武力蜂起ではありませんでした。日本の安保闘争と同様に、有権者の多数派の支持を得られず、議会構成に大きな影響を与えることはありませんでした。

戦後フランスの政治状況

五月革命以前のフランスは、第二次世界大戦後の不安定な政治体制、植民地独立問題に苦しんでいました。第四共和政の不安定な政治状況に対し、ド・ゴール将軍は第五共和政を樹立し、より強い大統領権限を確立させました。ベトナム戦争やアルジェリア戦争での経験が、フランス社会の不安定さに拍車をかけ、五月革命の土壌を形成しました。

五月革命のタイムライン

五月革命は、3月からの学生運動を起点として、段階的に拡大していきました。5月3日のソルボンヌ大学占拠、5月10日の大規模衝突、5月13日の大規模デモとゼネストなど、重要な出来事が連鎖しました。5月24日には2人の死者を出す事態に発展。5月27日、政府と労働組合の間で「グルネル協定」が締結され、最低賃金の引き上げなどが合意されたことは、革命の終息に向かう転換点となりました。

五月革命と社会への影響

五月革命は、フランス社会に多大な影響を与えました。セックス革命、対抗文化（カウンターカルチャー）の台頭、そしてサブカルチャーの隆盛など、社会変革の波は、70年代のパンク・ムーブメントや、現代の「黄色いベスト運動」にもつながっています。 しかし、毛沢東主義への盲信や、文化大革命の実態解明による幻滅なども革命の反省点として残されています。

主要人物

五月革命には、ジャン＝リュック・ゴダール、ジャン＝ポール・サルトル、アンドレ・マルローなど、多くの著名人が関わっていました。それぞれの立場や思想から五月革命を捉え、影響を与え、あるいは影響を受けました。

五月革命は、成功した革命ではなかったものの、フランス社会に大きな変革をもたらし、現代のフランス社会にまで影響を与え続けている歴史的出来事です。

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