五色素麺

五色素麺について

五色素麺（ごしきぞうめん）は、愛媛県松山市に由来する郷土料理として、多くの人々に親しまれています。この特別な素麺は、色とりどりの見た目が美しいことから、特に名物として評価されています。歴史的にも古くから存在し、『伊予節』においても「伊予の松山 名物名所」を称賛されていることから、その存在感がうかがえます。また、元禄年間に刊行された『諸國名物鑑』にも記載されており、五色素麺は関西地方の名物として広く知られていました。

発祥の背景

五色素麺の考案者は、松山にある長門屋とされています。この長門屋は、寛永12年（1635年）に松平定行が伊予松山藩に移り住む際に、移住した市左衛門によって創業されたとされています。特に興味深いのは、享保7年（1722年）に八代目市左衛門の娘が椿神社（伊豫豆比古命神社）への参拝中に、五色の糸が下駄に絡みついたのを見たことがきっかけで、父親に素麺に色を付けることを提案したということです。このアイデアが五色素麺の始まりとなりました。

最初は「長門屋素麺」として販売されていましたが、後にその名は「五色素麺」に改称され、次第に将軍や殿上人たちにも知られる存在になりました。寛永、享保年間には、禁裏への献上も行われ、「遊糸賞玩其の美玉として五色の如し」と評価されたという逸話が残っています。

この素麺は、見た目の美しさだけでなく、名品としての評価も高いことから、多くの有名人や文学者からも称賛を受けてきました。例えば、近松門左衛門は親交のあった松山の豪商・後藤小左衛門から五色素麺を贈られ、その礼状が今も現存しています。正岡子規もまた、明治26年に「文月のものよ五色の糸そうめん」という句を詠み、後に彼の門下生である長塚節も道後温泉に訪れた際に五色素麺を味わったことを日記に残しています。

近年の動向

さらに、平成29年には「子規・漱石生誕150年記念事業」の一環として、五色素麺株式会社森川が特別な五色素麺を発売しました。これにより、伝統的な郷土料理が新たに注目される機会となり、さまざまな年齢層の人々に楽しんでもらうことができるようになったのです。

五色素麺は、見た目の美しさと歴史的背景を併せ持つ特別な素麺であり、多くの人々に愛され続けています。愛媛県を訪れる際には、ぜひこの郷土料理を味わってみてください。色とりどりの五色素麺が、あなたの食卓を華やかに彩ってくれることでしょう。

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