五衛府

五衛府について

五衛府（ごえふ）は、律令制における中央軍事組織の一つで、主に天皇の日常生活や行幸時における警護を担当していました。また、宮城の警護や京内の夜間巡回などもその重要な任務です。古代日本の政治制度において、五衛府は特に占める役割が大きく、京に常駐する形で機能していました。

歴史的な変遷

五衛府の起源は701年（大宝元）に成立した大宝令に遡ります。この令では衛門府（えもんふ）や左右衛士府（えじふ）、左右兵衛府（ひょうえふ）が設置され、五衛府の体制が整えられました。その後、718年（養老2）には、養老令によってその仕組みが見直され、正式に五衛府制が確定しました。

時代が進むにつれて、皇位継承を巡る貴族間の対立などにより、五衛府の組織は何度も改編を経ました。811年（弘仁2）以降は、左右近衛府（このえふ）や左右衛門府（えもんふ）、左右兵衛府（ひょうえふ）などを含む六衛府制が安定した体制として定着しました。

組織編成

五衛府には、それぞれ督（とく）、佐（さ）、尉（い）、志（し）の四等官が配置されていました。特に衛門府には、門部（かどべ）に200人、物部（ものべ）に30人が配置され、また衛士府には一定数の衛士が在籍していました。兵衛府には、左右兵衛として各400人が配置され、組織の武力として機能しました。

衛士の具体的な人数については、当初は令で明確に定められていなかったため、状況に応じて必要な人員が配置されていたようですが、718年には国別の徴発数が規定されました。

任務と役割

五衛府の中でも特に注目されるのは物部で、彼らは主として警察的な職務を担当しました。刑部省における囚獄司や市司にも配置され、治安の維持に寄与していました。

舎人と兵部省

五衛府の防衛任務に加え、天皇の身辺警護を担当する舎人（とねり）も重要な役割を果たしていました。内舎人（うどねり）は中務省に属し、天皇の日常的な警護を行いました。一方、大舎人（おおとねり）は大舎人寮に所属し、主に出入りの警護を行いました。

中宮（皇后・皇太后・太皇太后）には中宮舎人が、東宮（皇太子）には東宮舎人がそれぞれ身辺を守る役割を担っていました。加えて、左右の馬寮（めりょう）や兵庫、内兵庫、造兵司など、兵部省に所属する各被官も中央軍事力として機能しました。

まとめ

五衛府は古代日本における重要な軍事組織であり、天皇や宮廷の安全を確保するために設立された制度でした。律令制による中央集権体制の中で、その役割は時代とともに変わっていきましたが、基本的な任務は一貫して天皇の警護に特化していました。律令制度の中での五衛府の存在は、国家の安全や治安を維持する上で欠かせないものであり、その歴史を理解することは古代日本の政治や社会を知る上で非常に価値があります。

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