近衛府

近衛府の概要

近衛府（このえふ、こんえふ）は、令外官の一種であり、平安時代に設立されました。和訳では「おおきちかきまもり」または「ちかきまもりのつかさ」と呼ばれ、唐名は「羽林」とされます。近衛府には、左右に部門が分かれており、長官には「大将」、次官には「中少将」が就任します。判官は「将監」、主典は「将曹」と呼ばれ、これらの官職の下には府生や番長、近衛舎人などが存在します。

近衛府の主な職務には、禁中、すなわち平安京の内裏を警衛することが含まれていました。具体的には、内郭にあたる宣陽門、承明門、陰明門、玄輝門の内側を警備し、朝儀においては威厳をもって行動します。また、天皇や皇族、高官の警護もその重要な職務の一環です。平安時代中期以降は朝政儀礼が定着し、近衛府の幹部ポストは名誉職化が進み、兵士も儀仗兵としての役割が強まるようになりました。

近衛府は六衛府において最も地位が高く、特にその重要性は歴史を通じて評価されています。天平宝字3年（759年）、まずは授刀衛が設置され、次いで天平神護元年（765年）に近衛府と改称され、さらにその後、大同2年（807年）には中衛府との再編が行われ、現在の左右近衛府が確立されました。左近衛府は大内裏の陽明門の北側、右近衛府は殷富門の北側に位置しています。

内部官職の構造

近衛府の官職は、各々が特定の役割を担い、序列や権限が明確に分かれています。

大将

大将は四等官の長官に相当し、権官は存在しません。左右にそれぞれ1名ずつ、すなわち「左近衛大将」・「右近衛大将」として称され、場合によっては「羽林大将軍」や「虎牙大将軍」といった唐名でも表現されます。大将の官位は、設立当初は正三位とされていましたが、後に従四位上に降格、その後再昇格して従三位として定着しました。

中将

中将は、四等官の次官にあたり、「大いスケ」と呼ばれます。各々左右に1名から4名が在籍し、通常「左中将」、「右中将」と表記されます。職務内容は主に、中将が蔵人頭に補任される際には「頭中将」と称されることがあります。

少将

少将は、中将の次官に相当し「少いスケ」と呼ばれることもあります。左右に2名から4名に分かれ、各々「左少将」、「右少将」と称されます。平安時代中盤から後半にかけても、少将の職務は重要視され続けました。

将監・将曹

将監は、実際の業務を行う現場指揮官として機能し、職務遂行能力が求められます。将曹はその配下を直接的に指揮し、組織運営に責任を負っています。

その他の職種

近衛府には府生や番長もあり、彼らは行幸の際や高官の外出時に特別な職務を担っていました。近衛舎人も300名ほど存在し、さまざまな役割を果たしています。

まとめ

近衛府は平安時代の日本において、重要な政治機関としての役割を果たし、多くの職種が存在し、それぞれに特別な職務が課されていました。近衛府の職務や内部構造は、歴史的背景の中で変化しながらも皇族や高官を守るための重要な役割を担い続けたことがわかります。

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