井ノ上正盛

井ノ上正盛

井ノ上 正盛（いのうえ まさもり、1973年5月11日 - 2003年11月29日）は、日本の外交官です。イラクにおける日本人外交官銃撃事件の犠牲となり、その職務に殉じたことで知られています。没後に従七位の位階に叙され、旭日双光章が追贈されました。

生涯と学歴

1973年5月11日、宮崎県都城市に生まれました。幼少期から武道に親しみ、小学生時代には少林寺流空手道錬心舘で稽古に励んでいます。

地元の都城市立妻ヶ丘中学校、そして宮崎県立都城泉ヶ丘高等学校で学び、1992年3月に高校を卒業しました。同年4月、熊本大学法学部に入学し、法律学を専攻しました。大学在学中の1995年9月には、難関である外務省専門職員採用試験に合格しています。1996年3月には熊本大学法学部法律学科を卒業し、法学士の学位を取得しました。

外交官としてのキャリア

大学卒業後の1996年4月、井ノ上氏は外務省に入省しました。最初の配属先は、中近東アフリカ局中近東第一課でした。以降、中東・北アフリカ地域を中心にキャリアを積み、在シリア大使館（ここでは語学研修も兼ねていました）、在チュニジア大使館といった在外公館での勤務を経験しました。

その後、在ヨルダン大使館に勤務する傍ら、イラク大使館員も兼務しました。イラクの情勢が緊迫化する中でも、同地域における日本の外交活動に深く関与していました。そして、最終的に在イラク大使館の三等書記官として赴任しました。

イラクでの殉職

2002年4月26日からはイラクに入り、戦後復興が進む現地の状況下で任務にあたっていました。2003年11月29日、井ノ上氏は同大使館の奥克彦参事官（後に殉職により大使に特進）と共に、イラク戦争後の復興支援活動などの重要な職務を遂行するため、イラク北部のティクリート近郊を訪問中でした。一行は、現地職員が運転する軽防弾車で移動していましたが、何者かによる突然の銃撃を受けました。

この襲撃により、井ノ上正盛氏は奥克彦参事官と共に命を落としました。享年30歳でした。この事件は「イラク日本人外交官射殺事件」として広く報じられ、日本の外交史において悲劇的な出来事として記録されています。

没後の措置と葬儀

井ノ上氏の殉職は、日本政府に大きな衝撃を与えました。殉職した同日付けで、政府は井ノ上氏に従七位の位階を叙しました。また、国家に対する功労を顕彰するため、旭日双光章が追贈されました。さらに、外交官としての功績と殉職の事情を考慮し、一等書記官へと二階級特進させられました。

2003年12月6日には、東京都港区の青山葬儀所において、井ノ上家、奥家、そして外務省による合同葬が執り行われました。この葬儀には、当時の小泉純一郎総理大臣をはじめ、歴代の総理経験者、現職の大臣、さらには各国の大使など、多数の要人が参列し、井ノ上氏の死を悼みました。

井ノ上氏の同期であった石川博崇氏（後に公明党参議院議員、防衛大臣政務官などを務める）は、同期を代表して弔辞を読み上げ、故人の功績と人柄を偲びました。

関連事項

イラク日本人外交官射殺事件
イラク戦争
テロリズム
連合国暫定当局（CPA）
* 政府開発援助（ODA）

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