連合国暫定当局

連合国暫定当局（CPA）とは

連合国暫定当局（Coalition Provisional Authority：CPA）は、2003年のイラク戦争終結後、アメリカ合衆国を中心とした連合国がイラクの復興と政府再建のために設立した暫定統治機関です。旧復興人道支援室（ORHA）を前身とし、国防総省の管轄下に置かれていました。CPAの本部はバグダードの旧大統領宮殿に置かれ、その周辺は米軍の管理下にあり「グリーン・ゾーン」と呼ばれていました。主権委譲後は「インターナショナル・ゾーン」として国連多国籍軍の管理下に置かれ、CPA解散後、宮殿はアメリカ大使館となりました。

主要人物

CPAには以下の主要人物がいました。

ジェイ・ガーナー代表: 当局発足からわずか1ヶ月で解任。
ポール・ブレマー代表: ガーナーの後任として、CPA解散まで運営を担った。
リッチモンド特別代表: CPAの活動を支えた。

CPAの政策

当初、国防総省から統治を引き継いだジェイ・ガーナーは、旧フセイン政権下のバアス党員やスンナ派勢力の協力を得て、穏健な改革を進める方針でした。しかし、ブッシュ政権やイラク国内のシーア派、クルド人勢力は、より急進的な変革を求め、ガーナーは1ヶ月で解任されます。後任にはポール・ブレマーが任命され、彼は旧バアス党員を公職から追放する政策を打ち出します。この政策は、フセイン政権下で公務員を務めていた多くのスンナ派住民を失業させ、彼らが武装勢力に加わる一因となりました。また、スンナ派とシーア派、クルド人との間の対立を激化させ、イラクの治安を悪化させることになりました。

国家運営においては、連合軍や連合国の人材不足が深刻で、各宗教・民族勢力が自治組織を運営し、勢力を拡大しました。特にクルド自治区では自治権が大幅に拡大され、独自の武装組織が治安維持にあたるなど、半独立国の様相を呈しました。これにより、周辺諸国はクルド人の独立運動を警戒するようになりました。

歴史

CPAの歴史は、イラク戦争終結から主権移譲までの短期間ですが、イラクの将来を大きく左右する出来事が多くありました。

2003年

3月19日: イラク戦争が始まる。
4月9日: フセイン政権が崩壊。米国防総省復興人道支援室（ORHA）が統治を開始。
4月21日: 連合国暫定当局（CPA）が発足。
5月1日: ブッシュ大統領が戦闘終結を宣言。
5月22日: 国連安保理決議1483により、CPAに占領軍としての特別権限が付与される。
7月13日: イラク統治評議会の最初の会合が開催され、フセイン政権崩壊日である4月9日が国民の休日となる。

2004年

4月: イラク保健省への行政権限移譲を開始。
5月28日: 統治評議会が暫定政権を選出。
6月2日: 暫定政権が発足し、統治評議会が解散。
6月24日: イラク各省庁への行政権限委譲が完了。
6月28日: 連合国暫定当局（CPA）が解散し、暫定政権へ主権が移譲。主権移譲は当初6月30日を予定していたが、武装勢力による妨害を恐れ、急遽2日前倒しで行われた。

CPAの評価

CPAは、イラクの復興と民主化を目指しましたが、その政策は多くの批判を浴びました。特に、旧バアス党員の公職追放は、スンナ派住民の不満を増大させ、その後のイラクの混乱を招いたとの指摘があります。また、国家運営における人材不足や、各宗教・民族勢力の対立も、CPAの政策が十分に機能しなかった要因として挙げられます。

関連情報

国際連合安全保障理事会決議1483
イラク戦争の年表

外部リンク

Coalition Provisional Authority（公式サイト）
イラク再建に向けた動き（外務省）


この文章は、連合国暫定当局（CPA）の設立から解散までの経緯、政策、そしてその後のイラクに与えた影響についてまとめたものです。CPAの活動は、イラクの歴史において重要な転換点であり、その後のイラクの政治・社会に大きな影響を与えました。

もう一度検索