井上博道

井上博道：大和路を写した写真家

井上博道（いのうえ はくどう、1931年6月28日 - 2012年12月12日）は、日本の写真家として知られています。兵庫県香住町に生まれ、兵庫県立豊岡高等学校、龍谷大学文学部仏教史学科を卒業しました。

1955年、産経新聞社大阪本社編集局写真部に入社し、カメラマンとしてのキャリアをスタートさせます。報道写真の現場で研鑽を積み、写真家としての基礎を築き上げました。1966年にはフリーの写真家となり、以降、自身の表現活動に専念します。

フリーランスとなってからも、井上氏は精力的に作品を発表し続けました。特に、大和路の世界をライフワークとして捉え、その美しい自然や歴史的建造物を写真に収め、多くの作品を生み出しました。その作品は、大和路の豊かな魅力を伝えるだけでなく、日本の伝統文化や自然への深い愛情を感じさせるものでした。

1983年には大阪芸術大学写真学科に勤務し、後進の育成にも尽力しました。1988年には自身の企画会社「(有)井上企画・幡」を設立し、写真家としての活動をさらに発展させました。1991年には、龍谷大学より龍谷賞を受賞し、その写真家としての高い評価が認められました。

1997年、大阪芸術大学を退職後も、奈良を中心に活動拠点を移し、大和路の撮影を続けました。数々の写真集を出版し、その作品は高い評価を得ています。代表的な作品としては、『大和路の野の花』、『奈良万葉』シリーズ、『東大寺』などがあります。これらの作品は、単なる風景写真にとどまらず、大和路の歴史や文化、人々の生活を深く捉えた、芸術性の高い作品です。

晩年は、奈良の自然や歴史をテーマにした作品制作に没頭していました。しかし、2012年10月5日、京都府木津川市で撮影中に転倒し、意識不明の状態で病院に搬送されました。その後、敗血症のため死去、81歳没でした。

井上博道氏の作品は、その技術の高さと、大和路への深い愛情が感じられるものとして、高く評価されています。彼の残した写真は、大和路の豊かな自然や文化遺産を後世に伝える貴重な記録であり、多くの人々に感動を与え続けています。

彼の出版物は多岐に渡り、単独の写真集だけでなく、著名な作家や学者との共著も数多く手がけています。淡交社、平凡社、講談社、光村推古書院など、多くの出版社から写真集や書籍が刊行されました。これらの作品を通して、井上氏は大和路の魅力を様々な角度から紹介し、多くの人にその美しさを伝えてきました。

主な出版物

「美の脇役」(淡交社)
「室生寺」(淡交社)
「神護寺・高山寺」(淡交社)
「中尊寺」(淡交新社)
「邪鬼の性」(淡交新社)
「平戸-人と歴史」(淡交社)
「羅漢-仏と人との間」(淡交社)
「水かがみ」(淡交社)
「不動の怒」(淡交社)
「山の宗教 修験道」(淡交社)
「京の裏道」シリーズ(平凡社)
「古寺巡礼」シリーズ(淡交社)
「日本の庭園」(講談社)
「奈良万葉」シリーズ(京都書院)
「東大寺」(中央公論社)
「やまとのかたち」「やまとのこころ」(講談社)
「西国薬師巡礼」(光村推古書院)
「万葉集 Man'yo Luster」(P・I・E BOOKS)
* 「美しい日本語の風景」(淡交社)

井上博道の作品は、大和路の自然や文化を深く理解し、それらを写真という表現手段を通して、多くの人に伝えようとした氏の真摯な姿勢が感じられます。彼の作品は、これからも多くの人々に感動と喜びを与え続けるでしょう。

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