井上宇市

井上宇市の業績と生涯

井上宇市（いのうえ ういち）は、1918年4月23日に埼玉県秩父郡秩父町（現在の秩父市）で生まれ、日本の建築設備学の第一人者として広く知られています。彼は早稲田大学名誉教授であり、日本建築学会の名誉会員としてもその名を知られています。2009年7月17日、肺炎により91歳で他界しました。

学問の道のり

井上は、旧制熊谷中学校を卒業後、1940年に旧制新潟高等学校を卒業しました。しかし、その後、肺結核を患い、約1年間療養を余儀なくされました。この療養期間を経て、彼は東京帝国大学の第一工学部船舶工学科に入学し、1944年に卒業しました。同年の10月には福生航空教導師団を経て、陸軍技術中尉として第1航空技術研究所に勤務しました。

戦後の1946年には大成建設株式会社に勤務し、その後1953年からは早稲田大学の建築学科に専任講師として招かれ、以来長きにわたり教育に従事することになります。彼は1954年に助教授に昇進し、1962年には教授に任命されました。1989年に定年退職を迎えるまで、彼は多くの学生に建築設備学の基礎と技術を教える存在でした。

受賞歴と業績

彼の業績の中でも特に際立ったものは、1964年に実施された東京オリンピックに関連して、代々木競技場と駒沢公園の企画、設計、管理を担当したことです。この業績により、日本建築学会賞の特別賞を受賞しました。また、1992年にはドイツ技術者協会（VDI）の建築設備部会からヘルマン・リーチェルメダルを授与され、その国際的な評価も定まることとなりました。

建築設備技術遺産

井上が遺した著作物には、「建築設備ポケットブック」や「空気調和ハンドブック」といった専門書があります。これらの著作は、日本の建築設備学における貴重な資料として認識されており、建築設備技術遺産としても評価されています。さらに、彼は井上宇市記念賞を設けるなど、後進の育成や建築設備分野の発展に尽力しました。

最後の時

晩年の井上は、日本建築学会を通じて、建築設備学の普及と教育に深く関わりました。彼がこの分野に貢献した影響は、今もなお続いており、彼の業績は多くの技術者や学生に受け継がれています。彼は2009年に肺炎のため死去し、その人生は多くの人々に忘れられることはないでしょう。

井上宇市の生涯は、建築設備学の発展を志し、教育と実務に情熱を注いだ一人の学者の足跡を映し出しています。

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