井上真

井上 真（いのうえ まこと）氏は、1960年に山梨県に生まれた日本の林学者です。現在、早稲田大学人間科学学術院の教授を務めており、その専門分野は森林社会学、森林政策学、そして特にインドネシアのカリマンタン地域に関する研究に及んでいます。

井上氏の学術的なキャリアは、1983年に東京大学農学部林学科を卒業したことから始まります。卒業後、農林水産省の林野庁に属する林業試験場（現在の森林総合研究所）で研究員としての第一歩を踏み出しました。1987年からは国際協力事業団（JICA）の専門家としてインドネシアに派遣され、教育文化省傘下の熱帯降雨林研究センターで熱帯林に関する研究に携わりました。このインドネシアでの経験が、後のカリマンタン地域研究の基盤となります。

帰国後、1990年には再び森林総合研究所の研究員となりますが、同年12月には東京大学より農学博士号を取得します。博士論文のテーマは、カリマンタンのクニャ-・ダヤク族を事例とした「焼畑システムの変容メカニズム」に関するものでした。その後、東京大学農学部および大学院農学生命科学研究科にて助手、助教授、教授と昇進を重ね、熱帯林や森林と人間社会の関わりについて深く研究を進めました。

2017年からは早稲田大学人間科学学術院に移籍し、現在に至るまで教育と研究に精力的に取り組んでいます。研究の中心は、森林という資源を巡る社会的な仕組みや政策、そして地域における人々と森林の関係性にあります。特に、共同管理資源としての「コモンズ」の視点から森林資源の持続可能な利用や保全のあり方を探求しており、多数の著書や論文でその成果を発表しています。

井上氏の研究成果は高く評価されており、複数の著名な賞を受賞しています。1993年には単著『熱帯雨林の生活』や熱帯林関連の一連の論文で林業科学技術振興賞を、1997年には単著『焼畑と熱帯林』で日本熱帯生態学会賞（吉良賞）を受賞。また、2004年には編著『アジアにおける森林の消失と保全』などが林業経済学会賞に選ばれています。さらに、2007年には単著『コモンズの思想を求めて』で日本森林学会賞を受賞するなど、その学術的貢献は多岐にわたります。2010年には「環境保全型発展に関する実践的な地域研究の構築」が評価され、大同生命地域研究奨励賞も受賞しています。

著作活動も活発で、『熱帯雨林の生活』、『焼畑と熱帯林』、『コモンズの思想を求めて』といった単著のほか、『コモンズの社会学』、『コモンズ論の挑戦』などの編著、多数の共著や共編著を手掛けており、国内外で広く影響を与えています。

学術研究の傍ら、井上氏は空手道を長年の趣味としています。現在は所属道場で師範代を務めるほどの腕前で、全日本空手道連盟和道会で五段、和道会指導員二級の資格を持っています。また、全日本空手道連盟公認四段、日本体育協会公認空手道指導員の資格も有しており、武道の世界でも指導的な立場にあります。

このように、井上真氏は林学者として森林と人間の複雑な関係性を探求し、その研究は多くの受賞によって認められています。また、空手道においても高い段位と指導資格を持つなど、文武両道に秀でた人物と言えるでしょう。

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