井上萬二

井上 萬二（いのうえ まんじ）について

井上萬二は、日本の陶芸界において卓越した技術と独自のスタイルを持つ陶芸家であり、重要無形文化財の保持者として広く知られています。1929年3月24日に佐賀県西松浦郡有田町に生まれ、初めから陶芸の道を歩む運命にありました。彼の生家は窯元であり、幼少期から素地や釉薬に親しんで育ちましたが、当時の社会背景から彼は軍人を志向し、1944年には海軍飛行予科練習生として訓練を受けました。

終戦後の1945年に故郷に戻ると、父親の勧めを受けて、酒井田柿右衛門の窯元で修行を始めました。彼は7年間の修業を経て、特に奥川忠右衛門の作品に影響を受け、彼のもとで白磁や轆轤の技術を学びました。1958年には酒井田柿右衛門窯を退社し、県立有田窯業試験場で技官としてのキャリアをスタートさせました。この時期に彼は独自の意匠や釉薬の研究にも励み、自らの芸術の基礎を築きました。

1969年、萬二はペンシルベニア州立大学からの招待を受け、有田焼について教えるためにアメリカへ渡ります。ここでの5ヶ月間の講師活動を通じて、彼は国際的な視野を広げ、さらに多くの人々に日本の伝統工芸を紹介することとなりました。また、彼の作品はドイツをはじめとする海外の様々な場所で展示され、特に2002年にモナコ国王の在位45年記念展での出展は注目を集めました。

彼の業績は数々の賞に結びついており、1968年には第15回日本伝統工芸展での初入選を果たし、1977年には全国伝統的工芸品展で通産大臣賞を受賞、1987年には文部大臣賞も手にしました。そして1995年には「白磁」の重要無形文化財保持者（人間国宝）に認定され、1997年には紫綬褒章を受章、2003年には旭日中綬章を受けるなど、その功績が高く評価されています。

2017年、万二は息子の井上康徳と孫の井上祐希と共に、有田町で自身の窯「井上萬二窯」を運営しており、平屋建てのギャラリーも構えています。彼の陶芸スタイルは、華やかな絵付けが特徴の有田焼とは異なり、中国伝来の白磁にこだわりを持ち、その純粋な美を追求し続けています。教育者としても彼は熱心であり、直接的または間接的に500人以上の弟子を育て上げ、アメリカでも150人以上の陶芸家を指導してきました。彼の影響力は、いまもなお陶芸界に浸透しているのです。

井上萬二の作品と教えは、彼が情熱を注いできた陶芸の世界を未来に引き継ぐ重要な役割を果たしています。

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