井上鋭夫

井上 鋭夫（いのうえ としお）

井上 鋭夫（1923年2月18日 - 1974年1月25日）は、日本の歴史研究において重要な足跡を残した学者です。特に、戦国時代を中心に各地で蜂起した一向一揆に関する研究で卓越した成果を挙げ、その分野の第一人者として高い評価を得ました。

石川県に生まれた井上は、旧制第四高等学校文科乙類を経て、1948年に東京大学文学部国史学科を卒業しました。大学で歴史学を修めた後、教育機関でのキャリアをスタートさせます。当初は跡見学園に勤務していましたが、1951年からは新潟大学人文学部に移り、研究者・教育者としての道を歩み始めます。新潟大学では当初助手として迎えられ、翌1952年には講師に昇任。その後も助教授として研鑽を積み、1968年4月には同大学の教授に就任しました。

新潟大学で教授となったわずか1ヶ月後の1968年5月、井上は金沢大学法文学部教授として転任します。石川県出身である彼にとって、郷里に近い金沢での研究・教育活動は新たな展開をもたらしました。

学術的な業績としては、1971年に東京大学から文学博士の学位を授与されたことが特筆されます。この時の学位論文「中世末期における一向一揆の研究」は、一向一揆史研究における金字塔として現在も評価されています。

井上の研究対象は一向一揆にとどまらず、中世から近世にかけての日本の社会や文化に広く及びました。特に、当時の人々の暮らしぶり、信仰のあり方、戦乱の様相、そして日本海沿岸地域の独自の文化といった多角的な視点から歴史を深く掘り下げることに注力しました。また、歴史研究に不可欠な基本作業として、古記録や文書などの史料の編纂にも力を尽くしました。これらの研究活動の成果は、数多くの著書として公刊され、後進の研究者や歴史愛好家に大きな影響を与えています。専門性の高い学術誌はもちろん、一般向けの歴史雑誌にも積極的に寄稿し、歴史学の知見を広く社会に伝えることにも貢献しました。

井上鋭夫は1974年に50歳の若さでこの世を去りましたが、その短くも濃密な研究活動は、日本中世史、特に一向一揆史研究において揺るぎない地位を確立しています。彼の著作や編纂史料は、今日の研究においても重要な基礎となっています。

参考文献

室山孝「井上鋭夫先生の思い出」『北陸史学』第23号、北陸史学会、1974年、61-63頁

外部リンク

城と古戦場-史料批判

（注：上記外部リンクは、井上氏の著作や研究に関連するものとして挙げられている可能性がありますが、直接的な井上氏のウェブサイトではありません。）

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