井原村 (広島県)

井原村

かつて広島県高田郡に位置し、現在は広島市安佐北区の一部にあたる地域に存在した村です。明治時代の自治体制度発足から、昭和の大合併により周辺村と統合され新たな町となるまでの約70年間の歴史を持ち、三篠川沿いの豊かな自然環境の中で独自の産業や文化を育んできました。

地理

村の地理的な特色としては、主要な河川である三篠川の流れが挙げられます。この川は地域の自然景観を形成するとともに、古くから生活用水や農業用水として人々の暮らしと深く関わってきました。

歴史

井原村の行政区分としての始まりは、1889年（明治22年）4月1日に施行された町村制によるものです。このとき、高田郡に属していた井原村は単独で村制を敷き、自治体としての第一歩を踏み出しました。
その後、村域には変更がありました。1949年（昭和24年）10月1日には、隣接する高田郡市川村の一部であった大寺地区が井原村に編入されています。
村としての歴史は、昭和時代後半の合併により終焉を迎えます。1956年（昭和31年）9月30日、井原村は同じ高田郡内の志屋村、高南村、そして三田村と合併し、新しい自治体である白木町を新設しました。この合併をもって、井原村はその行政単位としての歴史に幕を下ろしました。

地名の由来

「井原」という地名の起源については、二つの主な説が伝えられています。一つは、かつて三田郷内にあったとされる「井村」という名称が、後に分村する際に古くからの名が変化して「井原」となったというものです。もう一つは、この地域の鍋谷城に居城していたとされる人物、井原小四郎という武将の名に由来するという説です。これらの説は、地名にまつわる地域の歴史や伝承を示唆しています。

産業

井原村では、地域の自然環境を活かした様々な産業が営まれていました。中心となっていたのは農業と畜産です。また、かつては養蚕も重要な産業であり、生糸生産が行われていました。さらに、特産品として、畳を作るための畳表や、伝統的な技術による和紙の生産も行われており、これらの多様な産業が村の経済を支えていました。

交通

村の交通網において重要な役割を担ったのが鉄道です。1915年（大正4年）、現在のJR芸備線の一部となる芸備鉄道が開通し、村内には井原市駅が開設されました。この駅の開業は、地域住民や農産物、工業製品などの輸送を円滑にし、村の発展に大きく寄与しました。鉄道は、村と外部地域を結ぶ動脈として機能しました。

井原村は、明治から昭和にかけて自治体として存在し、地域の歴史に足跡を残しました。村は消滅しましたが、その歴史や文化、そして「井原」という地名の一部は、現在の広島市安佐北区の地域の中に引き継がれています。

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