井川一久

井川一久：激動の時代を駆け抜けたジャーナリスト

井川一久（いかわ かずひさ、1934年 - ）は、日本のジャーナリストであり、元朝日新聞記者として知られています。彼の足跡は、アジアの激動の時代を映し出す鏡のようです。

生い立ちと朝日新聞入社

愛媛県に生まれた井川は、朝日新聞に入社後、そのジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせました。1970年からはアジア総局員としてプノンペンに常駐し、カンボジアの内情を深く取材しました。1991年にはハノイ初代支局長に就任し、その後1992年からは外報部編集員として活躍しました。

カンボジア虐殺問題と論争

井川の名前が広く知られるようになったのは、1980年代のカンボジア虐殺問題を巡る論争でした。鵜戸口哲尚らとの間で激しい議論が交わされ、特に日本読書新聞に掲載された鵜戸口の論文「無責任な発言に奔走するジャーナリストを批判せよ」は、井川を激怒させました。これに対し、井川は「真実を拒む者の歪曲の指標」と題する反論を編集部に送りましたが、掲載は拒否されました。この一件は、井川のジャーナリストとしての信念と、真実を追求する姿勢を強く印象付けました。

著書と翻訳

井川は、そのジャーナリスト活動を通じて、多くの著書を出版しました。

『カンボジア黙示録』（田畑書店、1981年）
『世紀末症候群――ノスタルジー現象は破局の前兆』（太陽企画出版、1988年）
『このインドシナ――虐殺・難民・戦争』（連合出版、1980年、1985年、1989年）

また、翻訳家としても才能を発揮し、バオニンの『戦争の悲しみ』（めるくまーる、1997年）を翻訳しました。

令和2年度外務大臣表彰

長年にわたるジャーナリストとしての功績が認められ、2020年12月1日、井川一久は令和2年度外務大臣表彰を受賞しました。これは、彼の活動が日本外交に貢献したことの証と言えるでしょう。

関連人物

井川の周辺には、以下のような人物がいました。

本多勝一：朝日新聞の同僚であり、ジャーナリスト。
* 鵜戸口哲尚：カンボジア問題で論争を繰り広げた論敵。

井川一久は、激動の時代をジャーナリストとして生き抜き、その足跡は、現代社会においても重要な示唆を与えてくれます。彼の報道、著書、そして信念は、これからも多くの人々に影響を与え続けるでしょう。

もう一度検索